Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

翻弄される司法書士

弁護士VS司法書士 債務整理の境界は 大阪高裁で訴訟加熱
(弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」)
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090615#1244992202


 平成15年、認定を受けた司法書士に対し、簡裁代理権が付与されることとなったとき、100時間の研修が義務づけられましたが、「注釈司法書士法」は、その教材の1つだったと記憶します。
 法改正時に、法務省の立案担当者が改正法の解説として出した本です。しかも、立案担当者が、この法律の運用等について「私見」を述べたような部分ではなく、改正の根本にも関わる重大な点であり、これが法務省の有権解釈であると見るのは、誰にも明らかです。
 司法書士の代理権の範囲は、弁護士業務との関係で、当初から、非常に重要なポイントであったはずです。この代理権の範囲について書かれた書籍は、言わば、すべてこの本をもとに書かれたと言ってよく、すべての書籍が「受益権の範囲」と説明していたはずです。(私の回りの弁護士さんたちも、当然ながら、法改正の内容を、そうとらえておられました。)
 心ある司法書士は皆、この「範囲」を、常に意識して、業務を行なってきました。
「公式見解ではなく私見。法解釈について法務省としての見解はない」と言うのはあんまりでしょう。法務省さん。


 法改正の当時、ある弁護士の先生が、「『債務整理』や『消費者問題』と言うのは、弁護士にとってと、一般的にあまりお金にならず、一部、専門的にやっている人以外は好まない。成り立ての弁護士が事務所経営のためにやるもの、と言う意識があった。実際には、こうして困っている人がどんどん多くなる中で、司法書士が、(旧)法ギリギリの所で、これを救ってきた事実が、法改正につながった」と、言うようなことを言っておられたと記憶しております。


 弁護士が大量に生まれ、弁護士さんの間でも、過当競争、質の低下などが大問題になりつつあり、当然ながら、法曹増員に反対の声も上がってきております。
(法曹増員問題で「自由と正義」に不掲載となって記事について、「一日一冊! * 弁護士の読書日記 *」にも取り上げられておられます。http://lawbook.cocolog-nifty.com/blog/


「弁護士が増えれば、他の隣接法律職が、従来、手掛けてきた分野に進出するという動きも大きくなることは確実」(弁護士 落合洋司の 「日々是好日」)
今回の問題もそうですし、登記もそうです。弁護士職は「オールマイティ」であり、民間側では「法」を独占している職業ですらあるのですから、そう言う意味では太刀打ちは難しいところです。


 確かに、過払案件等では、このブログにも既出のとおり、目に余る司法書士が出てきております。しかし、私や私の回りの司法書士は、皆、半ば職業上の義務として、債務整理を受任しております。この業務全体で、「儲かっている」などと言うことは全くありません。言わば、「登記で得た収入で債務整理をやっている」とさえ言える状況です。
 それでも多くの司法書士が頑張っております。
 私の愛読ブログである、「田舎弁護士の訟廷日誌」の中で、先般の過払利息の発生時期についての判例等について、少し踏み込んだ説明を書いておられますが、その中にも、
消費者金融側は、戦いの舞台を、今度は、過払い利息の起算点はいつかという問題提起を行い、消費者側弁護士や司法書士と激しい戦いを繰り広げています。」とあります。
http://shimanami.way-nifty.com/report/
 弁護士の先生でも、単に「職域闘争」的な見方だけしているわけではないよねえ、と少し安心したりしました。


やはり法律的な解決が必要だと思いますが、
弁護士増員を見て、急に日和見となった法務省は、どれだけ我々を応援してくれるのでしょうか。代理権の拡張予定まで附帯決議していた、司法書士法の改正は、いったいどこにゆくのでしょうか?
 時代に翻弄される私達の資格ですが、「職域問題」(と言うより、職業的利権、利得のような問題)だけに、この問題を矮小化せず、司法書士制度、弁護士制度、その他関連職域の問題を含んだ、今後の法曹制度全体の見直しを見据えた議論がされる必要があるのではないかと思います。

☆とうとう最高裁判決がでました。
★最高裁:債務整理事件における簡裁代理権の範囲 - g-note(Genmai雑記帳)