Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

自己株式取得

特定株主からの自己株式取得手続の依頼を受けました。
 これに関する会社法の規定ぶりは、会社法の中でも、大変、わかりづらいものです。

(株式の取得に関する事項の決定)
第156条 〜合意により〜有償で取得〜総会の決議〜。【言わば枠取り】〜
(取得価格等の決定)
第157条 〜前条〜に従い〜取得〜するとき〜、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
2 〜取締役会設置会社〜は、〜取締役会の決議〜。
(株主に対する通知等)
第158条 〜株主〜に対し〜通知〜。【株主全員に機会を与える。・・・ミニ公開買付】
(特定の株主からの取得)
第160条 〜第156条決定に併せて〜第158条〜通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
2 〜前項の〜決定をしようとするときは〜、法務省令で定める時までに、株主〜に〜次項の〜請求〜できる旨を通知〜。
3 前項の株主は〜特定の株主に自己をも加えたものを〜総会の議案とすることを〜請求〜できる。
5 第一項の〜場合〜第158条〜の適用については〜「株主〜」とあるのは「〜特定の株主」とする。
(特定の株主からの取得に関する定款の定め)
第164条 〜第160条第一項の規定による決定をするときは同条第二項及び第三項の規定を適用しない旨を定款で定めることができる。
2 〜前項の〜定款の定めを設け〜変更〜するときは〜株主全員の同意を得なければならない。

 自己株式の取得は、株主全体から行なうミニ公開買付が原則である(156→158)と言うことに、こだわったせいでしょうか?
 「特定株主からの取得」を構成するのに、ミニ公開買付の場合の「株主全員への通知」規定を残したまま、その通知先を「特定の株主だけにする」、と言う構成にしたため、たいへん分かりづらくなっています。
 通知文などに条文を落とし込む際にも、簡単に落とし込めず、「なんで、こんな構成にしているんだろ」と思わざるを得ません。
 
 また、今回、この総会決議を319条により行なうこととしましたが、160条2項の法務省令」には、319条の適用に対応する「時」が定められておりません。*1
 これについて、某大先生は、160条3項の議案追加請求ある場合は、そもそも319条の提案に変更が加わることになり、「全員一致」とならないから成立しない。従って319条が成立するような場合は、2項、3項の適用はない、と言うような解釈をお持ちのように伝え聞きました。*2
 
 なるほど流石は某先生、などと思い、今回もこれにそって進めることにしましたが、そもそも「追加議案請求権」のことなど知らないような株主を相手にするため、あとから、この点について異議が出ないように、319条の提案書の中に「全員一致だから3項の適用はないのが前提」と言うことと「議案に賛成なら、3項の請求を行なわないことにも同意するよう」書き加えました。
 
 もっとも、私が扱うような会社は「なんちゃって」会社が多く、設立当初から定款に164条の規定(2.3項排除)を置いた方が、実際の会社運営に適合するのではないかなどと思い始めました。

*1:合併の際の反対株主への株式買取請求のための通知などには、319条の場合の起算についてもきちんと書かれております。

*2:この要約は正確でないかもしれませんが。