Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

東京高裁:建物買取請求権

弁護士の中山知行先生が、建物買取請求権についての東京高裁平成17年6月29日判決を取り上げておられましたので、読ませて頂きました。(中山先生、いつも感謝)
http://d.hatena.ne.jp/kusunokilaw/20101113
 そもそもこの事例は、競売により建物を取得した者が、借地借家法20条所定の借地権譲受承諾許可の手続をしなかったため、借地権譲渡の承諾がないことを理由に建物収去土地明渡を求められた事例です。建物所有者は、承諾あったことを主張するとともに、予備的に建物買取請求権を行使しました。


 流し読みをしていたのですが、意外にも、いくつか気になりました。
 浅学のなせる業とは思いますが気になった点を記載してみますと、

    1. 借地権譲渡の承諾については、地主が老齢で法律的には素人であったと言う点がポイントのように思え、この結論は仕方ないのかもしれませんが、一連の経緯からすると、ミスはあったにしろ建物所有者には少し気の毒な気がすること。
    2. (本件判断には関係ありませんが、)執行官は現況調査報告書に「敷地所有者に照会するも回答がない」と記載しているだけで、それ以上の調査、聞き取りの努力をした形跡がないことがうかがわれること。
    3. 10年前の建物の抵当権設定の際、地主が銀行に提出した「将来第三者が建物の所有権を取得したときは〜引続き貸与します。」旨の承諾書について、『競売手続当時に拘束力を有するものと認めることが困難』と一蹴されていること。(この種の承諾書は時々見ますが、金融機関としては、まさにこのような場合に備えて徴求していると思うのですが、簡単に蹴られています。)
    4. 建物買取請求権について、「3回にわたって最低売却価額が減価された」などの、競売手続の経過を買取価格に反映させるのは相当ではないとされていること。
    5. 建物買取請求権を行使の結果、『〜建物の所有権が〜移転した後も,同時履行の抗弁権又は留置権の反射作用によって本件土地を占有することができる〜が,その占有の権原が認められることはなく,地代相当の不当利得が生じると認めるのが相当』として、『買取代金の支払(供託)〜までの間,1か月当たり地代6万6600円相当額の不当利得を返還すべき義務を負う』としている点。(この点については、買取代金支払までの間、地主は支払わなくて良かったと考えると、それとの関係を考慮すべきではないかと思うのですが・・・)
    6. 〜買取代金の支払(供託)後に明け渡さない場合は、建物の占有によりその『賃料相当額の不当利得が生じる』とし、『その場合における〜賃料相当額については〜近隣の成約事例から算出し〜。1か月当たり19万円〜の返還〜義務を負う〜。』としている点。(上記6万6000円は、以前の約定賃料かと思うのですが、この場合には近隣価格を基準にしており、同じ「賃料相当額」の算定において、言わば遅延の場合にのみ別の基準になる理由が私には良くわかりません。)

(建物買取請求権)
十三条  借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。


(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)
第二十条  第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。
3  第一項の申立ては、建物の代金を支払った後二月以内に限り、することができる。