Genmai雑記帳

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最高裁:集合物譲渡担保の保険金への物上代位

平成22(許)14 債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成22年12月02日 最一小 決定
裁判要旨抜き書き

〜集合物譲渡担保権の効力は〜動産が滅失した場合〜に〜支払われる損害保険金〜請求権に及ぶ(場合がある)

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

 魚の養殖業者が貸金債権のため譲渡担保権設定契約を締結した。
〜養殖魚を通常の営業方法に従って販売できること,その場合〜これと同価値以上の養殖魚を補充することなどが定められていた。
 養殖魚が赤潮により死滅し〜共済金請求権を取得した。
 債権者は〜譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,本件共済金請求権の差押えの申立てをしたが、債務者は、譲渡担保権の効力は及ばないとして取消しを求める執行抗告をした。
原審は、

〜共済金請求権を取得したことは通常の営業の範囲を超えるもので,本件譲渡担保権の効力は本件共済金請求権に及び,相手方は,養殖魚が滅失した時点以降,本件共済金請求権に対して物上代位権を行使することができるとして〜執行抗告を棄却〜。

最高裁は、次のように判示しました。

〜集合物譲渡担保権は〜目的動産〜の価値を担保として把握するものであるから〜効力は〜滅失した場合〜損害保険金〜請求権に及ぶ〜。
 もっとも〜集合物譲渡担保契約は〜設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから〜通常の営業を継続している場合には〜上記請求権が発生したとしても〜直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り〜物上代位権を行使することは許されないというべき〜。


 上記事実関係によれば〜共済金請求権の差押えを申し立てた時点においては〜営業を廃止し〜譲渡担保権が実行されていたというのであって〜営業を継続する余地はなかったというべきであるから〜物上代位権を行使することができることは明らかである。



 物上代位権は、担保物権の通有性の一つですが、抵当権ほかの民法上の担保物権や特許、登録動産に関する特別法に基づくものなど以外には法定されてないと思われます。
 しかし、譲渡担保権は、判例法上認められてきた非典型担保権であり、できる限り抵当権の規定が準用されるものと解されているとされていることから、判例上もこれを認めていると言うことと思われます。
 ただ、上記にもあるとおり、設定者が利用を継続し、常に変動する集合物について、これを認める場合、限定的にならざるを得ず、上記の判断に至ったと言うことと思われます。


 先日、20個の集合動産を譲渡担保とする登記を完了したばかりですが、動産譲渡登記と言うものも、変更登記がない、データ申請のみで補正を認めないなど、登記としても特殊なものであり、そもそも譲渡担保そのものがわかりにくいことも相俟って、質問されても答えにくいことが少なくありません。