Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁: 敷引特約(通常損耗費を含む場合)

平成21(受)1679 敷金返還等請求事件
平成23年03月24日 最一小判
裁判要旨の抜き書き

1 〜敷引特約は〜高額に過ぎる〜場合には〜特段の事情のない限り,消費者契約法10条により無効〜
2 〜敷引特約が〜無効ということはできないとされた事例

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(抽出・加工あり。原文参照)

〜「本件契約書」〜条項〜。
ウ 〜明け渡した場合〜経過年数に応じた額を〜控除して〜残額を〜返還するが〜「通常損耗等」〜については,本件敷引金により賄い〜原状回復を要しない

 〜所論は〜通常損耗等〜の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われるものであるのに〜通常損耗等の補修費用を負担させる本件特約は,賃借人に二重の負担を負わせる〜特約であって,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから,消費者契約法10条により無効〜いうのである。

 まず,消費者契約法10条は,消費者契約の条項が〜任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであることを要件としている。
 〜敷引特約は〜通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものというべき〜。〜任意規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の義務を加重するもの〜

 次に,消費者契約法10条は,消費者契約の条項が〜信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであることを要件としている。
〜契約書に明示されている場合〜賃借人は,賃料の額に加え,敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結するのであって,賃借人の負担については明確に合意されている。

 〜そして,通常損耗等の補修費用は,賃料に〜含ませて〜回収が図られているのが通常だとしても,これに充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には,その反面において,上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当〜
〜敷引特約によって賃借人が上記補修費用を二重に負担するということはできない。〜

 また,上記補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは〜紛争防止する〜あながち不合理なものとはいえず,敷引特約が信義則に反して〜一方的に害するものであると直ちにいうことはできない。

 もっとも〜賃借人は,通常〜十分な情報を有していない上〜敷引特約を排除することも困難である〜,高額に過ぎる場合には〜情報の質〜量〜交渉力の格差を背景に,〜一方的に不利益な負担を余儀なくされたものとみるべき場合が多い〜。

 〜そうすると〜敷引特約は〜通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎる〜場合には〜近傍〜相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して〜利益を一方的に害するもの〜消費者契約法10条により無効〜。

〜本件特約〜経過年数や〜場所,専有面積等に照らし〜通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。〜
〜また賃料は月額9万6000円であって〜敷引金の額は〜経過年数に応じて〜2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加え〜更新される場合に〜更新料の支払義務を負うほかには,礼金等〜を支払う義務を負っていない。

〜 そうすると〜敷引金の額が高額に過ぎると評価〜できず〜消費者契約法10条により無効であるということはできない。