Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

質疑応答:数次相続の場合の登記申請手続について

登記研究758・H23.4月号(質疑応答)
   甲=乙
    |
    丙

甲、乙と順次死亡した場合の移転登記

●丙を相続人とする遺産分割協議書、又は乙の特別受益証明書等の添付があれば、甲→丙の移転登記可能。
●なければ、甲→乙丙、乙持分→丙の各移転登記をすべき。

⇒上記を遺産分割によって行う場合、丙は、「甲の直接の相続人として」の立場と、「(甲の相続人である)乙の相続人として」の立場を併有して、単独で協議することになると思われます。
(下記のとおり、これはできなくなったようです。)

 このケースのように、物件を相続した者が、相続しない側の協議者としても協議に参加する。(又は証明する。)と言うケースは良くあることなのですが、この場合、形式的に、本来、乙の立場であれば印鑑証明書の添付が必要になると考えて、丙の印鑑証明書を添付する必要があるでしょうか?

 これについて、先例や実例を流し読みしてみました。
(以下、抽出加工あり。必要な方は、自己責任で原文をあたって下さい。)

昭30.4.23、民事甲第742号民事局長通達
 遺産分割協議書を添付して相続による所有権移転の登記を申請するには、申請人を除く他の遺産分割協議者の協議書に押印した印鑑の証明書の提出を要する。

実例をみると、

●〜遺産分割協議により1番の土地を甲、2番の土地を乙が取得し〜申請した場合、甲の申請書には乙の印鑑証明書を、乙の申請書には甲の印鑑証明書を添付しなければならない。(登研192号)
●〜印鑑証明書は、申請人以外の者の印鑑証明書のみでよい。(登研104号・登研141号)
●〜申請人となる協議者以外の協議者の印鑑証明書を添付すれば足りる。(登研107号)
●〜申請人以外の協議者全員の印鑑証明書の添付を要する。(登研79号)

上記は、上記通達どおり「申請人以外」としています。

●〜添付すべき書面は遺産分割協議書、戸籍謄本他の相続人の印鑑証明書等である。(登研134号)
●〜遺産分割協議書に、遺産の分割を受ける者が押印をする場合、その印鑑は認印でも差し支えない。(登研429号)

 上記の場合は、「他の相続人」、「遺産の分割を受けない者」としての立場である乙の立場も併有する場合には必要、と読めなくはないかもしれません。

 しかし、実質的には、相続する者が証明する実益はないと言う点からすれば、不要と考えるべきではないかと思いますが、如何でしょうか?
【★★★ 印鑑証明書は必要と言うことでした。H23.6.16追記:父母順次死亡、単独子に直接相続する場合 - g-note(Genmai雑記帳)★★★】
なお、次のようなものもありました。

●甲不動産は遺産分割協議の結果、Aが取得したものであることを証明する」旨を記載し、これに他の相続人が署名押印した書面を添付してなされた遺産分割協議による相続登記申請は、受理して差し支えない。(登研189号)

 これは、所謂、遺産分割協議証明による場合で、私などは、ほとんどこれによっておりますが、協議の実体を確実とするため、また、全員の合意の事実を残すためにも、たいていの場合、申請人自身にも同じ証明書を作成してもらっています。

●甲、乙、丙の共同相続人中、甲よりの民法903条2項の特別受益者である旨の証明書及び印鑑証明書並びに乙、丙間の遺産分割協議書及び印鑑証明書を添付した乙又は丙からの相続による所有権移転登記申請は、受理することができる。(登研114号)

 これも、昔から行われており、時々、その根拠が話題になる実例です。

★変更??????
父母順次死亡、単独子に直接相続する場合(変更?) - g-note(Genmai雑記帳)

一人遺産分割協議の可否・敗訴判決 - g-note(Genmai雑記帳)