Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:懲戒請求の呼びかけ

平成21(受)1905 損害賠償請求
平成23年07月15日 最二小判
裁判要旨の要旨

 弁護士がテレビで、刑事事件の弁護団を〜懲戒請求をするよう呼び掛けた行為が不法行為法上、違法とはいえないとされた事例

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・判決原文
原審は、

〜(1)〜 本件発言〜は〜名誉毀損を構成するものではない〜
〜(2)〜懲戒請求に理由がないことを知りながら本件呼び掛け行為をした〜懲戒制度の趣旨目的を逸脱し,多数の〜理由のない懲戒請求を集中させ〜〜〜人格的利益を害するとともに〜不当な心身の負担を伴う反論準備等の対応を余儀なくさせた〜,名誉毀損とは別個の不法行為を構成する〜。

 としたのに対し、最高裁は、(1)は是としながら、(2)については、以下のように述べ、不法行為についても排斥しました。

〜被告人は〜上告審において初めて故意を否認し〜本件弁護団は,上告審が,本件否認〜を排斥した上で〜死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき審理を尽くさせるために〜原裁判所に差し戻したにもかかわらず,第2次控訴審においても改めて本件否認の主張を展開した〜。

〜(呼び掛け者)が,以上のような〜経過や〜否認の主張の内容を踏まえ,本件否認の主張〜は弁護士としての職責に反する旨を詳細に主張していることは記録上明らか〜。

〜(呼び掛け者)としては〜本件弁護活動が〜被告人に不利益な弁護活動として,懲戒事由に該当すると考えていたとみるのが相当〜懲戒請求に理由がないことを知りながら本件呼び掛け行為をしたとの原審の〜認定は,経験則に反する〜。

 元々、タレントとしての放言だと思っていましたので、詳しい発言内容を知ろうともしませんでしたが、むしろ、今回、最高裁によって、経緯や本来の主張内容を教えてもらったようなことになりました。

もっとも、最高裁

 〜本件呼び掛け行為〜は〜慎重な配慮を欠いた軽率な行為であり,その発言の措辞にも不適切な点があったといえよう。そして(弁護団側)が名誉感情を害され〜反論準備等の負担を強いられるなどして精神的苦痛を受けたことは否定することができない。

と述べながら、しかし、

 〜本件呼び掛け行為は,懲戒請求そのものではなく〜懲戒請求を勧奨するもの〜,〜娯楽性の高い〜トーク番組における出演者同士のやり取り〜の一環〜。

 〜その趣旨〜も,〜本件弁護活動〜は問題であるという自己の考えや懲戒請求は広く何人にも認められるとされていること〜を踏まえて〜視聴者自身の判断に基づく行動を促すもの〜。

〜他方,(弁護団側)は,社会の耳目を集める〜事件の弁護人であって〜社会的な注目を浴び〜国民による様々な批判を受けることはやむを得ない〜。

 〜懲戒請求は,本件書式にあらかじめ記載されたほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,広島弁護士会綱紀委員会〜の調査も一括して行われた〜,(弁護団側)も,これに一括して反論をすることが可能であったことや〜弁護士会懲戒委員会における事案の審査は行われなかったことからすると〜弁護士業務に多大な支障が生じたとまでいうことはできない。

として、下記のとおり結論づけました。

〜呼び掛け行為は,弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして,弁護士会における自律的処理の対象として検討されるのは格別,その態様,発言の趣旨,(弁護団側)の社会的立場,〜負うこととなった〜負担の程度等を総合考慮すると〜被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く,これを不法行為法上違法なものであるということはできない。

 橋下氏は昨年9月、この件で,大阪弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分を受けているそうです。
http://d.hatena.ne.jp/kusunokilaw/20110717

 正直な所、あまり興味もなく読み始めましたが、なかなか重要な判決でした。
 特に、この呼び掛け行為を「表現行為の一環」とし、「懲戒請求」の意味から考えて、上記結論に至っている点は、我々司法書士の制度を考える上でも、重要な示唆を受ける判決と思いました。
 これについては、3人の裁判官の補足意見があり、注目すべきものと考えますので、別に取り上げて読んでみたいと思っています。