Genmai雑記帳

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最高裁:譲渡担保権者の物的納税責任

 5日(金)、県庁所在地へ会議出席に行く列車途上、「登記情報」で「譲渡担保権者の物的納税責任」について読みました。
丁度、債権譲渡担保を組んでいる所でしたので、重要な情報を得ることができました。
早速、帰って調べましたら、下記判例が出ておりました。

平成16(行ヒ)310 債権差押処分取消請求事件
平成19年02月15日 最一小 判決
裁判要旨

 国税の法定納期限等以前に,将来発生すべき債権を目的として〜譲渡担保契約が締結され〜対抗要件が具備されていた場合〜,〜債権が〜法定納期限等の到来後に発生したとしても〜「〜法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている」ものに該当〜。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・判決原文
(抽出加工あり)
・Aは、Cとの間の継続的取引契約に基づく、次のア及びイの債権をJに譲渡する〜債権譲渡担保契約〜を締結〜。
 〜なお〜実行通知〜までは,Aが〜弁済を受けることができるものとされていた。
 ア〜平成9年3月31日現在〜債権
 イ〜同日から1年の間に取得する〜債権
・Aは〜確定日付のある内容証明郵便をもって〜債権譲渡担保の設定を通知〜。

・国は〜,Aの滞納国税のうち本件債権の発生前に法定納期限等を徒過していた〜国税(〜法定納期限等は,同9年9月30日ないし同10年1月5日〜)について,国税徴収法24条1項の規定により譲渡担保財産である本件債権から徴収するため,Jに対し,同条2項所定の告知〜。
・Cは、債権者不確知により〜供託。
・国は〜24条3項の規定に基づき,譲渡担保権者であるJを第二次納税義務者とみなし〜上記〜供託金〜還付請求権を差し押さえた〜

・〜24条6項は,「〜法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている事実を〜証明した場合」等には,〜同条1項の規定は適用しない旨規定している。

原審は,次のとおり判示して差押えを有効としました。

 〜将来発生すべき債権を〜譲渡担保の目的とするいわゆる集合債権譲渡担保契約を締結し,〜対抗要件を具備した場合であっても,〜法定納期限等が到来した後に発生した債権については,〜発生時に滞納者から譲渡担保権者に移転するものであるから〜その発生時に譲渡担保財産となったものと解すべき〜。

 しかし、最高裁は、次のとおり判示し、差押えを違法としました。

(1) 将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は,譲渡の目的とされる債権が特定されている限り,原則として有効なものである(平成9年(オ)第219号同11年1月29日〜判決)。
 また,将来発生すべき債権を目的とする譲渡担保契約が締結された場合には,債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない限り,〜目的とされた債権は譲渡担保契約によって〜譲渡担保設定者から譲渡担保権者に確定的に譲渡されているのであり,〜目的とされた債権が将来発生したときには,〜特段の行為を要することなく当然に〜債権を担保の目的で取得することができる〜。

 そして〜譲渡担保契約に係る債権の譲渡については,指名債権譲渡の対抗要件〜の方法により〜第三者対抗要件を具備することができる〜(〜平成12年(受)第194号同13年11月22日〜判決〜参照)。

 〜24条6項の解釈においては,〜法定納期限等以前に,将来発生すべき債権を目的として,債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない譲渡担保契約が締結され〜対抗要件が具備されていた場合には,譲渡担保の目的とされた債権が〜法定納期限等の到来後に発生したとしても〜「国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている」ものに該当すると解する〜。

(2)〜本件契約においては〜担保権実行の通知をするまでは,A社が〜弁済を受けることができるものとされていたというのであるが,これをもって〜債権譲渡の効果の発生を留保する付款であると解することはできない(前掲平成13年11月22日〜判決参照)。

〜24条1項の規定〜適用〜できない〜。〜同条3項〜に基づき〜行った本件差押えは違法〜。

国税徴収法

(譲渡担保権者の物的納税責任)
第二十四条 納税者が国税を滞納した場合に〜、その者が譲渡した財産で〜譲渡担保財産〜があるときは、その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り、譲渡担保財産から〜徴収することができる

2 税務署長は、前項〜より徴収しようとするときは〜譲渡担保権者〜に対し〜金額その他〜書面により告知しなければならない。〜

3 前項の告知書を発した日から十日を経過した日までに〜徴収〜金額が完納されていないときは、〜譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして、その譲渡担保財産につき滞納処分を執行することができる。〜。

8  第一項の規定は、国税の法定納期限等以前に、担保の目的でされた譲渡に係る権利の移転の登記がある場合又は譲渡担保権者が国税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となつている事実を、その財産の売却決定の前日までに、証明した場合には、適用しない。〜。

なお、地方税法にも同様の規定があるようです。要注意ですね。
地方税法第十四条の十八(譲渡担保権者の物的納税責任)