Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:通常損耗についての原状回復義務

平成16(受)1573 敷金返還請求事件
平成17年12月16日 最二小判
裁判要旨抜き書き

1 〜通常〜損耗について〜原状回復義務を負うためには〜負担することになる〜損耗の範囲につき〜契約書自体に具体的に明記されているか〜口頭〜説明し〜明確に認識して〜合意〜したものと認められるなど〜特約が明確〜合意〜必要〜。

2 〜原状回復〜条項には〜負担することになる〜損耗の範囲が具体的に明記されておらず〜修繕費負担区分表の〜補修対象部分の記載は,上記損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず〜入居説明会における〜説明でも〜範囲を明らかにする説明はなかったという事情の下においては〜特約が成立〜いえない。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文

昨日の敷引特約と消費者契約法10条・解説 - g-note(Genmai雑記帳)の記事でと取り上げられていた、通常損耗特約に関する判決です。

大阪府の公共的住宅の賃貸に関するもののようです。
事前に入居説明会も開かれており、契約書別紙の表に基づいて負担することになる旨の説明もされたようです。

(抽出加工あり)

(5)〜契約書22条2項は〜明け渡すときは〜すべて〜を撤去して〜原状に復するもの
とし,本件負担区分表に基づき補修費用を被上告人の指示により負担しなければな
らない旨を定めている。〜

(6) 本件負担区分表は,
・補修対象物〜「項目」欄,
・〜補修を要する状況等〜「基準になる状況」欄,
・補修方法等〜「施工方法」欄及び
・〜費用負担者〜「負担基準」欄

から成る一覧表によって〜負担基準を定めている。このうち,
「襖紙・障子紙」〜要補修状況は「汚損(手垢の汚れ,タバコの煤けなど生活することによる変色を含む)・汚れ」,
「各種床仕上材」〜要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損と認められるもの」
「各種壁・天井等仕上材」〜要補修状況は「生活することによる変色・汚損・破損」
 というものであり,いずれも退去者が補修費用を負担するものとしている。
〜「破損」とは「こわれていたむこと。また,こわしていためること。」,
 「汚損」とは「よごれていること。または,よごして傷つけること。」
であるとの説明がされている。

原審は、

本件〜表は〜契約書の一部〜であり〜内容は明確〜,〜通常損耗〜補修費用も退去者が負担するものとしている〜,上告人は,本件負担区分表の内容を理解した旨の書面を提出して〜契約を締結している〜
 〜通常損耗〜補修費用の一部〜負担することを定めたものであり〜これを内容とする本件契約が成立〜。

としたのに対し、最高裁は、

〜通常損耗〜原状回復義務〜は〜予期しない特別の負担を課すことになる〜同義務が認められるためには,少なくとも,
 〜補修費用を負担する〜通常損耗の範囲が〜契約書の条項自体に具体的に明記〜か, 〜契約書では明らかでない場合には〜口頭〜説明し〜その旨を明確に認識〜それを合意の内容としたものと認められるなど
 〜「通常損耗補修特約」〜が明確に合意されていることが必要〜

として、

〜上記1(5)〜自体において〜特約内容が具体的に明記されているということはできない。
〜上記1(6)〜であり,〜「基準になる状況」欄の文言自体からは,通常損耗を含む趣
旨であることが一義的に明白であるとはいえない。
〜その内容を具体的に明記した条項はないといわざるを得ない。

〜入居説明会〜においても,通常損耗補修特約の内容を明らかにする説明はなかったといわざるを得ない。
〜通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできない〜。

と判断しました。

 上記1(5)、1(6)を読む限り、いささか無茶な判断のようにも思えます。別途、通常損耗補修特約に係る特段の書面でも交わさない限り、認められないのではないかと思われるほどです。
 しかし、結局、通常損耗についての判例の流れは、余程でない限り、これを認めないと言う姿勢なのだと言うことだと思われます。