Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:取立委任を受けた手形からの再生後の回収

平成22(受)16 不当利得返還請求事件
平成23年12月15日 最一小判
裁判要旨抜き書き

 〜取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は〜再生手続開始後の取立てに係る取立金を〜銀行取引約定に基づき〜弁済に充当することができる

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文


1.銀行取引約定を締結
〜債務を履行しなかった場合〜手形その他の有価証券について,必ずしも法定の手続によらず一般に適当と認められる方法,時期,価格等により取立て又は処分の上,その取得金から諸費用を差し引いた残額を法定の順序にかかわらず〜債務の弁済に充当することができる。

2.再生手続開始の申立て
〜申立て当時〜少なくとも9億〜円の当座貸越債務を負担〜。

3.銀行は〜申立てに先立ち〜満期を(申立後)とする約束手形について,取立委任のための裏書譲渡を受けた。銀行は,本件各手形について商法521条の商事留置権を有する。

4.銀行は〜再生手続開始後,本件各手形を順次取り立て,合計5億〜円の取立金を受領〜。

原審

1.〜別除権の行使によって優先的に弁済を受けるためには〜担保権に優先弁済権が付与されていることが必要〜。
留置権は,留置的効力のみを有するものであり,商法及び民再法には〜優先弁済権を付与する旨の規定もない〜,優先的に弁済を受けることはできない。
留置権による競売〜の場合〜被担保債権と〜換価金引渡債務に対応する反対債権との相殺により事実上の優先弁済が受けられるとしても〜開始後に債務を負担したときは相殺が禁止される〜,留置権者は,再生手続開始後に受領した換価金を再生債務者に返還しなければならない。

2.別除権の目的である財産の受戻し〜や担保権の消滅〜は〜厳格な要件の下に行われる制度〜,単なる任意弁済である本件条項に基づく弁済充当の場合とは〜異にするから,〜私人間の合意によって弁済禁止の原則〜に例外を設けることは許されない。

最高裁

1.留置権は〜弁済を受けるまで目的物を留置することを本質的な効力とする〜,留置権による競売〜は〜弁済を受けないままに〜留置をいつまでも継続しなければならない負担から留置権者を解放するために認められた手続であって〜本質的な効力を否定する趣旨に出たものでない〜から,留置権者は〜競売が行われた場合には,その換価金を留置することができる〜。
−この理は〜約束手形が取立てにより取立金に変じた場合であっても〜異なるところはない〜。
−したがって,〜取立金を留置することができる〜。

2.〜上記取立金を法定の手続によらず債務の弁済に充当できる旨定める銀行取引約定は,別除権の行使に付随する合意として,民事再生法上も有効〜。

−したがって,会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。

補足意見があり、
 民再法は、破産法が商事留置権を特別の先取特権とみなして優先弁済権を与えているのに対し、商事留置権については、変更を加えていないこと、その他について、詳しく解説されているようです。
 難しくて時間がかかるので、本日は、時間切れです。