Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:賃借権確認請求と地代額確認

平成21(受)1766 建物収去土地明渡等請求及び賃借権確認請求独立当事者参加事件
平成24年01月31日 最三小判
裁判要旨の抜き書き

 〜賃借権そのもの〜の確認を求め,地代額の確認まで求めたとはいえないのに〜主文で地代額を確認した〜判断には,当事者が申し立てていない事項について判決をした違法がある

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文

分かりにくいので、独立当事者参加の方だけで言うと、

請求の趣旨は、

「原告と参加人との間において,参加人が別紙物件目録記載の土地につき,貸主を原告とする建物所有目的の賃借権を有することを確認する」

と言うものであったが、

第一審は、

〜Aを貸主として,地代を年額で固定資産評価額の1000分の60に相当する金額とし,木造建物及びその他の工作物の設置を目的とする賃借権を有することを確認した。

参加人は、

単に賃借権の確認を求めたのであって,地代額の確認は求めていなかったなどと主張して控訴

原審は、参加申出書の請求原因どおりの判決で、全部認容したのだから、控訴利益なしとして却下。

最高裁

〜賃借権を〜主張する者は〜地代額の確認を求めずに,土地賃借権そのものを有することの確認のみを求めることができる〜

〜請求の趣旨の記載に加え,第1審における審理の経過等を併せ考慮すると,〜地代額の確認まで求めたものとはいえず〜請求原因中の地代額の記載は,自らが相続により承継したと主張する上記賃借権の発生原因である〜当初の賃貸借契約の内容として〜地代額を主張したものにすぎない〜。

〜したがって,第1審判決には,当事者が申し立てていない事項について判決をした違法があり〜控訴の利益がないとして〜却下した原審の判断には〜明らかな法令の違反がある。

としました。


この判決について、町村先生が、判決そのものについてではなく、

 賃借権確認といっても〜すくなくとも、誰と誰の間で、何を目的物とした賃借権なのかは、特定する必要がある。
−それに加えて、「いつ」、「何のために」、「いくらで」という部分は、賃貸借契約の本質的な要素ではあっても賃借権の特定には必ずしも必要がない。

 として、まさに、この判決を教材とした解説をされておられます。arret:民訴教材:246条違反の例: Matimulog

一方、この判決そのものに対する議論もあるようです。

しかし,一方で,処分権主義に反しないとする判例もあります。
最一小判昭和32年1月31日民集11巻1号133頁
今回の判決は,両判決の関係について明らかにしなかったため,今回の判決の射程や,事実上の判例変更なのかについて議論があるようです。
2012-02-01 - ボ2ネタ [ボ2]