Genmai雑記帳

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最高裁:破産前の無委託保証人による破産後弁済による求償権

平成21(受)1567 預金返還請求事件
平成24年05月28日 最二小判
裁判要旨

1 〜主たる債務者の破産手続開始前にその委託を受けないで締結した保証契約に基づき〜開始後に弁済をした場合に〜取得する求償権の破産債権該当性(積極)
2 〜上記求償権を自働債権とする相殺の可否(消極)

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(抽出・加工あり。原文参照)

(1)〜Bら〜は,銀行〜との間で〜当座勘定取引契約〜。
(2)(銀行)は,平成18年4月〜Bらの委託を受けないで〜Bらの取引先であるHとの間で,Bらが〜Hに対して負担する買掛債務〜につき〜保証〜
(3)Bらは〜平成18年8月〜破産手続開始〜。
(4)(銀行)は〜Hに〜弁済〜。
(6)(銀行)は,平成19年6月〜求償権と〜当座勘定取引〜債権とを〜相殺〜

(1)〜保証契約が〜破産〜前に締結〜(破産法2条5項)〜。
〜無委託保証人が〜破産〜前に締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合〜求償権は,破産債権〜。

(2)ア 相殺は〜債務者の資力が不十分な場合においても〜確実かつ十分な弁済を受けたと同様の利益を得ることができる点において〜担保権を有するにも似た機能を営む〜(最高裁昭和39年(オ)第155号〜)。
−〜破産法67条〜破産手続開始時〜破産者に対して債務を負担する破産債権者による相殺を認め〜破産手続によることなく〜優先して〜回収を図り得ることとし,〜別除権と同様に取り扱う〜。

 他方〜債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続の下〜,上記基本原則を没却するものとして〜許容し難いことがあり得ることから〜71条,72条が〜相殺を禁止〜72条1項1号は,かかる見地から〜開始後に他人の破産債権を取得してする相殺を禁止〜。

イ 〜開始前に〜委託を受けて保証〜開始後に弁済〜求償権〜自働債権とする相殺は〜債権者の公平・平等な扱いを基本原則とする破産手続の下においても,他の破産債権者が容認すべきもの〜67条によって保護される〜。

−〜無委託保証人が〜開始前に〜保証〜開始後に弁済〜求償権を自働債権とする相殺を認めることは,破産者の意思や法定の原因とは無関係に〜優先的に取り扱われる債権が作出されることを認めるに等しい〜。
−〜開始後に〜破産者の意思に基づくことなく〜破産債権を行使する者が入れ替わった結果相殺適状が生ずる点において〜開始後に他人の債権を譲り受けて相殺適状を作出した上〜相殺に類似〜72条1項1号が禁ずる相殺と異なるところはない。

〜無委託保証人が〜破産手続開始前に締結した保証契約に基づき同手続開始後に弁済をした場合〜求償権を自働債権とし〜破産者が〜有する債権を受働債権とする相殺は〜72条1項1号の類推適用により許されない〜


破産法

(定義)
第二条
5 この法律において「破産債権」とは〜破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権〜であって、財団債権に該当しないものをいう。

(相殺権)
第六十七条 破産債権者は〜手続開始の時において〜債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺〜できる。
2 破産債権者の〜債権が〜期限付若しくは解除条件付であるとき、又は〜前項の規定により相殺をすることを妨げない。破産債権者の負担する債務が期限付若しくは条件付であるとき、又は将来の請求権に関するものであるときも、同様〜。

第七十一条 破産債権者は、次に〜場合〜、相殺〜できない。

  • 一 〜開始後に破産財団に対して債務を負担したとき。
  • 二 支払不能〜後に契約によって負担する債務を専ら〜相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を破産者との間で締結〜、又は破産者に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより〜債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
  • 三 支払の停止〜後に〜債務を負担した場合であって〜負担の当時、支払の停止〜を知っていたとき。ただし〜支払の停止があった時に〜支払不能でなかったときは、この限りでない。
  • 四 破産手続開始の申立てがあった後に〜債務を負担〜場合であって〜負担の当時〜申立てがあったことを知っていたとき。

2  前項第二号から第四号までの規定は〜債務の負担が次の〜原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。

  • 一 法定の原因
  • 二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産〜申立てがあったことを破産債権者が知った時より前に生じた原因
  • 三 破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因

第七十二条 破産者に対して債務を負担する者は、次に〜相殺〜ができない。

  • 一 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。
  • 二 支払不能〜後に破産債権を取得した場合であって〜取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
  • 三 支払の停止〜後に破産債権を取得した場合であって〜取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
  • 四 破産手続開始の申立て〜後に破産債権を取得した場合であって〜取得の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

2 前項第二号から第四号までの規定は〜破産債権の取得が次の〜適用しない。

  • 一 法定の原因
  • 二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因
  • 三 破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因
  • 四 破産者に対して債務を負担する者と破産者との間の契約

参考
最高裁:差押債権と相殺 - g-note(Genmai雑記帳)(上記引用判決)
最高裁:譲受債権と相殺 - g-note(Genmai雑記帳)

g-note(Genmai雑記帳)