Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:撤回遺言の撤回

平成7(オ)1866 遺言無効確認等
平成9年11月13日 最一小判決
裁判要旨抜き書き

一 〜別の遺言をもって撤回した場合に〜遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活する。
二 〜甲遺言を乙遺言をもって撤回した後更に乙遺言を無効とし甲遺言を有効とする内容の丙遺言をしたときは、甲遺言の効力が復活する。

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(抽出・加工あり。原文参照)

・昭和六二年〜遺産の大半を被上告人に相続させる内容の〜甲遺言〜をした。
・平成二年三月〜被上告人に相続させる遺産を減らし、甲遺言の内容より多くの遺産を被上告人以外の者に相続させる内容の〜乙遺言〜をした。〜末尾には、「この遺言書以前に作成した遺言書はその全部を取り消します」との記載がある。
・平成二年一一月〜「Gに渡した遺言状は全て無効としH弁護士のもとで作成したものを有効とする」と記載された〜丙遺言〜をした〜「Gに渡した遺言状」とは乙遺言書を指し、「H弁護士のもとで作成したもの」とは甲遺言書を指している

 〜原遺言〜を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは民法一〇二五条ただし書の法意にかんがみ〜原遺言の効力の復活を認めるのが相当〜。
−〜乙遺言をもって甲遺言を撤回し、更に丙遺言をもって乙遺言を撤回したものであり、丙遺言書の記載によれば〜甲遺言を復活させることを希望していたことがあきらかであるから、本件においては、甲遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当〜

 http://d.hatena.ne.jp/kusunokilaw/20121113にありましたので、読んでみました。(感謝)

 上記のような場合、公証実務的には、甲遺言及び乙遺言を特定して、その全部を撤回させた上で、再度、甲遺言と同じ内容の遺言をする、と言う方式をとると思われます。(公証実務上、「内容部分」について、他の文書等の援用を認めない方針のようですので。)

 上記のような判例はあるものの、単に乙遺言を撤回することによっては、甲遺言は復活しないと言うことだったと思います。古橋大先生も、似たケースで下記のように書いておられます。
第2遺言の受贈者の死亡により第1遺言が復活するか: 司法書士古橋清二の『朝礼ですよ』