Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:遺留分減殺による取得権利の相続財産性

平成3(オ)1772 遺留分減殺
平成8年01月26日 最二小判
裁判要旨抜き書き

 〜財産全部の包括遺贈に対して遺留分〜減殺請求権〜した場合〜遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文

(抽出・加工あり。原文参照)

〜被上告人は、上告人に対し〜遺留分減殺請求権を行使〜
〜上告人は〜本件不動産のうち〜(四)土地〜を〜売却〜移転登記〜。

被上告人の〜請求
遺留分減殺請求により〜本件不動産につき遺留分割合〜の共有持分権を有するに至った
〜(四)土地を除く〜不動産について遺留分減殺を原因とする所有権一部移転登記手続を求める
〜(四)土地の売買は右共有持分権を侵害するもので不法行為を構成〜売買代金の二四分の一〜の支払等を求める

原審

〜上告人は〜包括遺贈により〜全遺産を取得〜、
遺留分減殺請求〜遺言による指定(全部)が修正〜、右修正された相続分の割合により〜全遺産につき〜遺産分割前の遺産共有の関係が成立〜、

〜分割前の遺産共有の状態にある場合でも〜相続分に従った共同相続登記を受けることができ、
〜単独の〜移転登記を受けているときは、遺産共有権に基づきその是正を求めることができる〜
遺留分減殺請求〜により〜共有の関係になったような場合においても〜相続分に応じた共同相続の状態にあることを示す登記に是正することが許されるべき〜
〜故意に(四)土地を売却〜損害を賠償すべき〜

最高裁

遺留分〜減殺〜した場合、遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し〜遺留分を侵害する限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属する〜(〜51年08月30日〜二小判〜)、

財産全部についての包括遺贈に対して〜減殺請求〜した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない

 特定遺贈が効力を生ずると〜特定の財産は何らの行為を要せず〜直ちに受遺者に帰属〜遺産分割の対象となることはなく、
また、民法は、〜減殺請求を〜遺留分保全するに必要な限度で認め(1031条)、
〜減殺請求権を行使するか否か〜を〜権利者の意思にゆだね(1031条、1043条〜)、
減殺の結果生ずる法律関係を、相続財産との関係としてではなく、請求者と受贈者、受遺者等との個別的な関係として規定する(1036条、1037条、1039条、1040条、1041条〜)など、
〜行使の効果が〜権利者と受贈者、受遺者等との関係で個別的に生ずるものとしている
〜から、

特定遺贈に対して〜減殺請求権を行使した場合に〜権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない〜

〜財産全部についての包括遺贈は、遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりにこれを包括的に表示する実質を有するもの〜特定遺贈と〜性質を異にするものではないから〜。

〜被上告人が〜有する〜共有持分権は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない〜上告人に対し、右共有持分権に基づき所有権一部移転登記手続を求めることができ、また、上告人の不法行為によりその持分権を侵害されたのであるから、その持分の価額相当の損害賠償を求めることができる。

 kanzaiの日記の先生が、2012-06-16で、最高裁:遺留分減殺による指定相続分・持戻し免除の減殺 - g-note(Genmai雑記帳)判例について書いておられるものの中にありましたので、読んでみました。(kanzaiの日記の先生、いつも感謝)

kanzaiの日記の先生は、
〜平成8年判決によれば、遺留分減殺請求後の共有関係の解消は、共有物分割によることになる。〜
〜平成8年判決の考え方は、相続分の指定には及ばないとする見解が多数説であり、この流れを前提に平成24年01月26日の判決が出たと考えられる、としておられます。