Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:不法行為除斥期間、相続人不確定の場合

2009-04-30分の改記)
平成20(受)804 損害賠償請求事件
平成21年04月28日 最三小判
裁判要旨の抜き書き

 〜殺害した加害者が被害者の相続人において〜死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために〜その事実を知ることができず,相続人が確定しないまま〜殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に〜殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは〜724条後段の効果は生じない

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文

(抽出・加工あり。原文参照)

(2) 上告人は,昭和53年〜小学校内においてAを殺害〜死体を〜自宅の床下に〜隠匿〜。
(5) 〜発覚を防ぐため〜周囲をブロック塀,アルミ製の目隠し等で囲んで〜サーチライトや赤外線防犯カメラを設置〜。
(6) 〜土地区画整理事業の施行地区となった。〜当初は〜明渡しを拒否〜,最終的には〜死体が発見されることは避けられないと思い〜約26年後の平成16年〜警察署に自首〜。
(7) 〜死体が発見〜,DNA鑑定〜平成16年9月〜Aの死体であることが確認〜C及び被上告人らは,Aの死亡を知った。
(8) C及び被上告人らは,平成17年4月〜本件訴えを提起〜。

〜724条後段〜,不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたもの〜裁判所は,当事者からの主張がなくても〜期間の経過により〜請求権が消滅したものと判断すべき〜(〜59(オ)147・平成1年12月21日最一小法判〜)。

〜160条は,相続財産に関しては相続人が確定した時等から6か月を経過するまでの間は時効は完成しない旨を規定〜相続人が確定しないことにより〜時効中断の機会を逸し,時効完成の不利益を受けることを防ぐことにある〜
〜相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも〜確定〜から6か月を経過するまで〜は,時効は完成しない(35年(オ)348・35年09月02日最二小判〜)。そして〜死亡の事実を知らない場合は〜915条1項〜の〜熟慮期間が経過しないから,相続人は確定しない。

これに対し〜724条後段〜を字義どおりに解すれば,不法行為により被害者が死亡したが〜死亡の事実を知らずに〜20年が経過した場合〜相続人が〜損害賠償請求権を行使する機会がないまま〜除斥期間により消滅することとなる。

しかしながら〜加害者が〜死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために〜知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも〜一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。
〜このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様〜,その限度で724条後段の効果を制限することは,条理にもかなう〜(平成5年(オ)708・10年06月12日最二小判〜)。

〜殺害した加害者が,被害者の相続人において〜死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において〜相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは〜160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じない〜。

〜C及び被上告人らは,平成16年9月〜にAの死亡を知り〜3か月内に限定承認又は相続の放棄をしなかったことによって単純承認をしたものとみなされ〜,これにより相続人が確定〜,更にそれから6か月内である平成17年4月〜に本件訴えを提起〜,〜は前記特段の事情があるものというべき〜請求権が消滅したということはできない。

少数意見(田原睦夫裁判官):724条後段は,時効と解すべき。多数意見は、法的には既に消滅している請求権の行使を認めるもので、論理的には極めて困難な解釈〜。

98年の予防接種禍訴訟判決に続き2例目だそうです。

民法

不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者〜が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

(相続財産に関する時効の停止)
第160条  相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時〜から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

ボ2ネタの先生は、「それだったら,20年の期間も,「除斥期間」ではなく「時効」って解釈すればいいのに・・。」と書いておられます。
ボ2ネタ2009-04-29の記事

一方、落合先生は、「立法趣旨を、除斥期間の適用制限へとうまく結びつけていて、妥当な判断ではないか〜。」と書いておられました。
2009-04-28