Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:被相続人が完成した時効の援用

平成11(受)223 土地所有権移転登記手続請求事件
平成13年07月10日 最三小判
裁判要旨

 被相続人の占有により取得時効が完成した場合において,その共同相続人の1人は,自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文

(抽出・加工あり。原文参照)

〜被上告人が〜父である亡D〜が〜占有を20年継続〜によって〜時効取得したと主張〜上告人〜に〜所有権移転登記手続を求めるもの〜
(2) Dは〜昭和35年〜占有を開始〜昭和55年〜当時も〜占有していた。
(3) Dは〜昭和62年〜死亡〜相続人は,妻E,長男F,二男被上告人及び長女G〜
(4) 被上告人は〜Dの占有によって完成した取得時効を援用〜。

原審

〜Dが〜所有権を時効取得〜不動産の全部につき被上告人への所有権移転登記手続を求める請求を全部認容〜。

最高裁

〜時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができる〜
被相続人の占有により取得時効が完成した場合において,その共同相続人の一人は,自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる

〜Dの法定相続人の間で〜遺産分割協議が成立したなどの事情があれば格別〜ない限り,被上告人は,Dの占有によって完成した取得時効の援用によって,本件不動産の全部の所有権を取得することはできない〜

・遺産分割等によって取得して利用してきた土地が、

  • 先代の時代から越境していて、隣接地番の一部を自主占有してきたような場合や、
  • 先代の時代から地番を誤認していて、他人所有地を自主占有してきたような場合は、こう言う問題は生じないものと思われます。

この判例について、
 Dが生前に取得時効の援用をしていた場合は、いったん亡D名義に時効取得による所有権移転登記をする必要があるが、相続人が援用した場合は、直接、自己名義への移転登記を求めることができる根拠として書いてあるものがあるらしいです。(「新版民事訴訟と不動産登記一問一答」テイハン〜)。


田舎の司法書士のブログ 時効取得と占有の承継
★判例等:取得時効関係判例・記事(随時更新) - g-note(Genmai雑記帳)