Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:相殺適状と時効

平成23(受)2094 根抵当権〜抹消〜本訴,貸金〜反訴事件
平成25年02月28日 最一小判
裁判要旨

 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文

(抽出・加工あり。原文参照)
(被上告人:債務者  上告人:貸金業者貸金業者であるAを吸収合併))

(1) 〜貸金業者〜との間で〜平成8年10月〜まで〜取引〜18万〜円の過払金〜。
(2)〜平成14年〜A〜との間で〜根抵当権〜設定〜。
 〜Aは〜貸し付け〜遅滞したときは当然に期限の利益を喪失〜特約〜。
 上告人は,平成15年〜Aを吸収合併〜。
 〜平成22年〜7月〜支払を遅滞〜期限の利益を喪失〜。
(3) 被上告人は,平成22年8月〜上告人に対し〜過払金返還請求権〜28万〜円の債権を自働債権とし〜貸付金残債権を受働債権として〜相殺〜意思表示〜。さらに〜残元利金〜を弁済〜。
(4)〜根抵当権〜は確定している〜被上告人は〜相殺及び弁済により〜被担保債権は消滅〜主張〜。
(5) 上告人は,平成22年9月〜過払金返還請求権について〜(1)の取引が終了〜10年が経過〜時効消滅〜援用〜。

原審

(1)〜被上告人〜は,期限の利益を放棄しさえすれば,これを受働債権として〜相殺することができた〜吸収合併により〜債権債務の相対立する関係が生じた平成15年〜の時点で〜相殺適状〜。
(2) 〜被上告人は〜508条により〜相殺〜できる〜被担保債権〜消滅〜。

最高裁

〜505条1項は,相殺適状につき,「双方の債務が弁済期にあるとき」と規定している〜自働債権のみならず受働債権についても,弁済期が現実に到来していることが相殺の要件〜。
−また,受働債権の債務者がいつでも期限の利益を放棄することができることを理由に〜相殺適状にあると解することは〜債務者が既に享受した期限の利益を自ら遡及的に消滅させることとなって,相当でない。〜

「既に弁済期にある自働債権」と「弁済期の定めのある受働債権」とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要するというべきである。

〜貸付金残債権については〜期限の利益を喪失〜全額の弁済期が到来〜この時点で〜相殺適状〜。
〜508条の趣旨に照らせば〜消滅時効が援用された自働債権はその消滅時効期間が経過する以前に受働債権と相殺適状にあったことを要する

〜過払金返還請求権〜相殺適状時において既にその消滅時効期間が経過していた〜同条は適用されず〜相殺は〜効力を有しない。〜根抵当権の被担保債権〜残存〜

民法

(相殺の要件等)
第505条  二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
第508条  時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

内藤先生が関連で書いておられた判決
最高裁:時効債権の譲受と相殺 - g-note(Genmai雑記帳)

kanzaiの日記さんも取り上げておられました。
2013-06-22

★判例等:相殺関係判例・記事(随時更新) - g-note(Genmai雑記帳)