Genmai雑記帳

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最高裁:消滅時効待ちの方針

平成24(受)651 損害賠償請求事件
平成25年04月16日 最三小判
裁判要旨抜き書き

 債務整理〜を受任した弁護士が〜消滅時効〜待つ方針を採る場合〜上記方針に伴う不利益等や他の選択肢を説明すべき委任契約上の義務を負う〜事例

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(抽出・加工あり。原文参照)

〜3社と〜和解〜過払金を回収〜。
〜B及びDに対し〜元本債務の8割〜を一括して支払うという和解案を提示〜「〜この和解に応じていただけない場合,預った金は返してしまい,5年の消滅時効を待ちたいと思います。」,「訴訟等の債権回収行為をしていただいても構いませんが,かかった費用を回収できない可能性を考慮のうえ,ご判断ください。」などと記載〜。
〜Dはこれに応じなかった。

〜A方に電話〜回収〜額やDに対する残元本債務の額について説明〜そのまま放置して〜消滅時効の完成を待つ方針〜を採るつもりであり,裁判所やDから連絡があった場合には〜対処すること,回収した過払金〜を返還するがDとの交渉に際して必要になるかもしれないので保管しておいた方が良いことなどを説明〜
〜Aに対し,「債務整理終了のお知らせ」と記載された文書を送付〜Dに対する未払分として29万7840円が残ったが消滅時効の完成を待とうと考えているなどと記載〜。

〜平成18年8月〜過払金合計159万〜円から〜回収の報酬47万9038円及び債務整理費用30万円〜,Bに支払った和解金等を差し引く経理処理〜残額の48万7222円から振込費用を控除〜残金をAに送金〜。

平成21年4月〜消費者金融業者の経営が厳しくなったため以前よりも提訴される可能性が高くなっており,12万円程度の資金を用意できればそれを基に一括して支払う内容での和解交渉ができるなどと説明〜Aは,被上告人が依頼者から債務整理を放置したことを理由とする損害賠償請求訴訟を提起されたとの報道等を受けて〜不安を抱くようになり,同年6月〜被上告人を解任〜

Aは,上告代理人に改めて債務整理を委任〜Dと交渉〜平成21年12月〜和解金50万円を分割して支払う内容の和解を成立〜

原審

〜Aが〜上記〜内容等の説明を受け〜異議を述べず〜黙示に承諾したと認められる〜説明義務に違反したとは認められないと判断〜

最高裁

 本件〜時効待ち方針は,Dが〜何らの措置も採らないことを一方的に期待〜時効の完成を待つというもの〜,〜最終的な解決が遅延するという不利益があるばかりか〜Dが〜回収を断念し〜時効が完成することを期待し得る合理的な根拠があったことはうかがえない〜提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクをも伴うもの〜。

 また〜回収した過払金から〜報酬等を控除してもなお48万円を超える残金があった〜残債務を弁済するという一般的〜債務整理の方法によって最終的な解決を図ることも〜十分に考えられた〜。

 このような事情の下〜委任契約に基づく善管注意義務の一環として,時効待ち方針を採るのであれば〜伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,回収した過払金をもって〜弁済するという選択肢があることも説明すべき義務〜

裁判官田原睦夫,同大橋正春の各補足意見〜