Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:虐待情報提供の職員に対する訴訟

(2009-10-24分の改記分)
平成20(受)1427 謝罪広告等請求本訴,慰謝料請求反訴事件
平成21年10月23日 最二小判
判示事項抜き書き

 〜老人ホーム〜虐待行為〜の新聞記事が〜職員からの情報提供等を端緒として掲載〜法人が,複数の目撃供述等が存在していたにもかかわらず〜虚偽であるとして同職員に〜損害賠償請求訴訟の提起〜違法〜とはいえないとされた事例

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(抽出・加工あり。原文参照)

(2)〜虐待行為の疑い〜札幌市の立入調査〜。
〜Yから〜暴行〜報告〜。
〜投書の中に〜Bの〜暴行〜複数人からの投書が存在〜。
(3) 〜B〜全面的に否定〜。〜全職員〜個人面談〜。〜Y〜,Bの〜目撃状況についての報告〜。〜Y同席の下〜Bに〜有無を確認〜供述は変わらなかった。
〜全職員〜個人面談〜複数の職員からもBの〜暴行を目撃〜供述〜身体に〜こん跡があったと〜記録がなかった〜虐待の事実はないと確信〜。
(4) 〜情報提供行為等を端緒〜記事を〜「b新聞」に継続的に掲載〜。
(6) A施設長らは〜被上告人らに対して,怒鳴ったり緊急職員会議に出席させなかったりするなどの多くの嫌がらせ行為〜。〜本訴を提起〜虚偽の事実〜報道機関に情報提供した結果〜記事が掲載された〜損害賠償請求〜
(7) 実際には,B等の複数の介護職員が入所者への暴行行為を行っていた。

原審

(1) 本訴〜は〜情報提供の内容が虚偽のものであることを前提とする〜いずれも主たる部分において真実〜〜わずかな調査をしさえすれば理由のないことを知り得たにもかかわらずこれを怠って提起されたもの〜不法行為〜。
(2) 〜本訴の提起は〜嫌がらせ行為と一体として不法行為を構成〜

最高裁

(1) 法的紛争の当事者が〜終局的解決を裁判所に求め得ることは,法治国家の根幹にかかわる重要な事柄〜〜提起が不法行為を構成するか否かを判断するに当たっては,いやしくも裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重な配慮〜。

〜紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは,原則として正当〜
〜提起が〜違法〜といえるのは〜提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど〜裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる〜(〜60オ122・63年01月25三小判〜H7オ160・11年04月22日一小判〜)。
〜報道により信用又は名誉が損なわれた〜救済を求める場合,訴えの提起は〜数少ない手段の一つ〜

(2) 〜複数の投書や目撃供述が存在していたものの〜簡略なものとはいえBから虐待の事実を全面的に否定する供述を得〜Y同席の下で,Bに事実の有無を確認するなどした〜供述は一貫してこれを否認〜
〜Yの〜報告内容自体にも矛盾〜感じており〜身体に〜こん跡〜記録もなく〜札幌市の調査〜〜個別の虐待事例については〜特定するには至らなかった〜。

〜特段の根拠もないまま〜虐待がなかったものと思い込んだということはできず〜主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて本訴を提起したとまでは認められない〜。〜本訴の提起は〜計画的な嫌がらせ行為として組織的に行われたものともいえない。
〜本訴の提起は,いまだ裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとはいえず,被上告人らに対する違法な行為とはいえない〜。

判決文を眺める限り、法律論としては相当性ある判断と思いますが、
訴えられた職員側としては許せないでしょうね。
こんな時、判決にもう少し余事かもしれないような言葉を加えてあげたら、などと思ってしまいました。
前に「気骨の判決」を読みましたが、
戦前の大審院判決なんかは、その点、かなり緩やかなように感じました。