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最高裁:貸金庫内の動産差押

平成8(オ)556 動産引渡請求事件
平成11年11月29日 最二小判
裁判要旨抜き書き

一 貸金庫の内容物については〜貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差し押さえる方法により、強制執行をすることができる。
二 〜取立訴訟においては〜貸金庫を特定し〜貸金庫契約が締結されていることを立証すれば足り、貸金庫内の個々の動産を特定〜立証する必要はない。

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(抽出・加工あり。原文参照)
原審

1貸金庫契約〜は〜場所(空間)の賃貸借〜(銀行)は〜内容物についても〜重畳的に包括的な占有を有している。
2したがって、〜利用者の〜動産引渡請求権の差押え〜更には、その取立訴訟〜できる〜。
3〜引渡請求権は〜所有権又は貸金庫契約のいずれに基づくものであっても〜実体法上の権利に基づく個別的な物の引渡請求権〜取立訴訟において〜具体的な個々の〜動産が〜存在していることが主張立証されなければならない。

最高裁

1〜貸金庫取引は、銀行の付随業務である保護預り〜の一形態〜
〜銀行が〜貸金庫ないし貸金庫内の空間を利用者に貸与〜有価証券、貴金属等の物品を格納するために利用させるもの〜
〜銀行の協力なくして〜取り出すことができない。
〜銀行は〜内容物に事実上の支配を及ぼしており〜「所持」(民法一八〇条)を有する〜また〜業務として〜行う〜安全に保管する責任〜「自己ノ為メニスル意思」(同条)を持って〜所持〜。したがって〜内容物について、利用者と共同して民法上の占有を有する〜
 もっとも〜施錠を解いた後は〜開閉や内容物の出し入れには関与せず〜利用者が何を貸金庫に格納し又は取り出したかを知らず、貸金庫に実際に物品が格納されているか否かも知り得る立場にはない。
このような〜特質から〜格納された有価証券、貴金属等の各物品について個別的に成立するものではなく〜内容物全体につき一個の包括的な占有〜

2〜利用者は〜請求〜銀行が〜開扉できる状態にする〜銀行は〜事実上の支配を失い〜全面的に利用者に移転〜。そうすると〜取り出すことのできる状態にするよう請求する利用者の権利は、内容物の引渡しを求める権利〜。
〜この引渡請求権は〜内容物全体を一括して引き渡すことを請求する権利〜というべき〜。

3〜貸金庫の内容物については、法一四三条に基づいて利用者の銀行に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差し押さえる方法により、強制執行をすることができる

4〜執行官において〜内容物の引渡しを受け〜売却〜売得金を執行裁判所に提出〜。〜内容物全体を対象とする一括引渡請求権であるため〜差押禁止物や換価価値のない物を含めて〜動産全体の引渡請求権に差押えの効力が及ぶ。〜執行官をして〜内容物全体の一括引渡しを受けさせた上、売却可能性を有する動産の選別をさせるのが相当〜
〜債権者において特定の種類の動産に限定して引渡請求権の差押命令を申し立てた場合〜動産の範囲を限定するもの〜このような限定が付された場合には、執行官が売却可能な動産を選別するに当たってこの制限に服すべき〜このことにより〜一括引渡請求権という性質が変わるものではない。

 〜〜任意にされない場合の取立訴訟においても〜貸金庫を特定し〜貸金庫契約が締結されていることを立証すれば足り〜個々の動産を特定してその存在を立証する必要はない

なお、本件〜命令においては、対象動産が「現金、株券など有価証券、貴金属」〜に限定〜執行官が売却可能な動産を選別するに当たってこの制限に服すべきことは、前記のとおり〜

参考
貸金庫内の動産を差し押さえる方法: 司法書士古橋清二の『朝礼ですよ』
〜この事案のおもしろいところは、動産を換価する手法として、動産そのものではなく、動産の引き渡し請求権を執行対象としているところ〜

貸金庫の開扉: 嘆きのホミック /大阪市中央区の司法書士事務所