Genmai雑記帳

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最高裁:親子関係不存在確認請求と権利濫用2

平成17(受)833 親子関係不存在確認請求事件
平成18年07月07日 最二小判
判示事項抜き書き

〜嫡出子として記載されている者と〜実親子関係について父母の子が不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

(1) 被上告人は〜ABの〜長女〜(D夫婦〜と養子縁組〜。)
Cは〜A夫婦の二女〜。
(2) 〜(実の親である)F夫婦〜懇請〜Aは〜A夫婦の〜長男として出生〜届〜。
〜上告人は〜昭和51年までA夫婦及びCと生活を共にした。〜Cは,上告人の学費を負担するなど上告人の養育に協力〜。
A〜死亡〜遺産はすべて妻であるBが相続〜。
〜真実〜を認識するに至ったが〜従前と同様に,B,C及び被上告人と〜家族としての関係を継続〜。
B〜死亡〜。〜遺言によりすべてCが相続〜。
〜独りで生活していたC〜死亡〜約10日後に発見された。〜
(7) 被上告人は,上告人がCの安否の確認をしなかったために〜発見が遅れたと思い憤りを感じていたところ〜法要の参列者を〜被上告人に相談なく決めようとしたことなどに反発〜上告人とA夫婦との間の実親子関係を否定するに至った。

原審

〜身分関係を公証する戸籍にはその記載が正確であることを確保すべき要請がある〜身分関係の存否確認訴訟の判決には対世的効力があるからその訴えの提起者に関する個別事情を重視するのは相当ではない〜訴訟に至る経緯〜上告人の受けるであろう精神的苦痛等を考慮しても〜請求が権利の濫用〜とまでいうことはできない。

最高裁

〜実親子関係不存在確認訴訟は〜存否について関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって画一的確定を図り,これにより実親子関係を公証する戸籍の記載の正確性を確保する機能を有するもの〜,〜戸籍の記載が異なる場合には,実親子関係が存在しないことの確認を求めることができるのが原則〜。
〜しかし〜例外を認めないものではない〜

〜第三者である丁が甲乙夫婦と〜子である丙との〜親子関係が存在しないことの確認を求めている場合〜
〜実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ,
〜判決をもって〜確定することにより丙及びその関係者の被る精神的苦痛,経済的不利益
〜改めて養子縁組の届出をする〜可能性の有無,
〜丁が〜不存在確認請求をするに至った経緯及び〜動機,目的,
〜確定されないとした場合に丁以外に著しい不利益を受ける者の有無等〜
〜諸般の事情を考慮し〜不存在を確定〜が著しく不当な結果をもたらす〜とき〜権利の濫用〜というべき〜。

(1) 〜死亡〜までの約55年間〜実の親子と同様の生活〜,被上告人は,Cの〜相続が問題となるまで〜実子であることを否定したことはない。
(2) 判決をもって〜不存在が確定されるならば〜精神的苦痛は軽視し得ない〜Cの〜相続が問題となっていることから〜経済的不利益も軽視し得ない〜。
(3) 〜A夫婦は〜関係を維持したいと望んでいたことが推認されるのに,A夫婦が死亡した現時点〜嫡出子〜身分を取得することは不可能〜。
(4) 被上告人は,Cの死亡の発見が遅れたことについて憤りを感じたこと,Cの法要の参列者が〜相談なく決めようとされたことなどから,〜親子関係を否定するに至ったというのであるが,そのような動機〜は〜実親子関係を否定する合理的な事情とはいえない。

〜長期間にわたり実親子と同様の生活〜,〜養子縁組をすることがもはや不可能であることを重視せず,〜精神的苦痛,経済的不利益,被上告人が〜否定するに至った動機,目的等を十分検討することなく〜権利の濫用に当たらないとした原審の判断〜違反がある。〜差し戻す〜。