Genmai雑記帳

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最高裁: 発信者情報開示請求

(2010-04-14分の改記分)
平成21(受)609 発信者情報開示等請求事件
平成22年04月13日 最三小判
裁判要旨抜き書き

1 〜発信者情報の開示〜法律4条1項に基づく〜開示請求に応じなかった〜者は,〜同項各号所定の要件のいずれにも該当〜を認識し,又は〜一見明白であり〜認識〜できなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負う。

2 〜侮辱的な表現を一語含むとはいえ,具体的事実を摘示して〜社会的評価を低下させるものではなく,特段の根拠を示さず〜意見ないし感想としてその語が述べられているという事情の下においては〜社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白〜ということはできず〜重大な過失があった〜いえない。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

〜被上告人は〜A学園の学園長〜。上告人は〜「DION」(KDDI)〜
〜「2ちゃんねる」〜掲示板〜「なにこのまともなスレ 気違いはどうみてもA学長」〜
〜発信者情報〜の開示を請求〜
〜権利が侵害されたことが明らかであるとは認められない〜開示には応じられない旨回答〜

原審

〜特定〜できる状況で〜「気違い」であると指摘〜社会生活上許される限度を超えて〜権利(名誉感情)を侵害〜一般の社会常識に照らして容易に判断〜できる〜権利を侵害〜,本件スレッドの他の書き込みの内容等を検討するまでもなく〜書き込みそれ自体から明らか〜。
〜開示請求に応じなかったことについては,重大な過失〜

最高裁

法は,4条1項において〜権利を侵害されたとする者は,侵害情報の流通によって〜権利が侵害〜が明らかであるなど同項各号所定の要件のいずれにも該当する場合,〜開示関係役務提供者〜に対し,〜発信者情報〜の開示を請求〜できる旨を規定する一方で,同条2項において〜発信者の意見を聴かなければならない旨を,同条4項〜において〜応じないことにより〜生じた損害については,故意又は重過失がある場合でなければ賠償の責任を負わない旨〜規定〜

〜法の〜趣旨〜侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であることなど〜請求が同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は〜該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負う〜。

〜議論はまとも〜異常な行動をしているのはどのように判断しても被上告人である、との意見ないし感想を,異常な行動をする者を「気違い」という表現を用いて表し,記述したものと解される。
〜「気違い」といった侮辱的な表現を含むとはいえ〜人格的価値に関し,具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく,〜名誉感情を侵害するにとどまる〜社会通念上許される限度を超える侮辱行為〜と認められる場合に初めて〜人格的利益の侵害が認められ得るにすぎない。

〜本件書き込み中,被上告人を侮辱する文言は上記の「気違い」という表現の一語のみ〜書き込みの文言それ自体から,これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず〜他の書き込みの内容,本件書き込みがされた経緯等を考慮しなければ〜権利侵害の明白性の有無を判断することはできない〜。
〜開示請求を受けた上告人にとって,必ずしも容易なものではない〜
〜本件書き込みによって〜権利が侵害〜明らか〜とは認められないとして〜開示請求に応じなかったこと〜は〜重大な過失〜ということはできない〜。

これについて、町村先生が、Matimulogで書いておられます。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(抽出・加工あり。原文参照)
(発信者情報の開示請求等)

第4条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、〜開示関係役務提供者〜に対し〜発信者情報(氏名、住所その他〜)の開示を請求〜できる。

  • 一 侵害情報の流通によって〜請求〜者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
  • 二 〜開示〜請求〜者の損害賠償請求権の行使のために必要〜その他〜正当な理由があるとき。

2 〜請求を受けたときは〜開示するかどうかについて〜発信者の意見を聴かなければならない。
3 〜開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に〜発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
4 開示関係役務提供者は〜開示の請求に応じないことにより〜請求〜者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。〜。

発信者情報開示請求標準書式