最高裁:保存登記抹消と処分権主義
(2010-04-22分の改記分)
平成21(オ)1408 所有権保存登記抹消登記手続等請求事件
平成22年04月20日 最三小判
裁判要旨抜き書き
1 甲乙の共有〜不動産につき,甲乙丙を共有者とする所有権保存登記がされている場合〜,甲の丙に対する〜丙持分〜抹消登記〜請求は〜更正登記〜を求める趣旨を含む〜。
2 〜甲は,丙に対し,甲の持分についての更正登記〜を求めることができるにとどまり,乙の持分についての更正登記〜までを求めることはできない。
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(抽出・加工あり。原文参照)
x1 | x2 | A | J | |
---|---|---|---|---|
立場 | 相続人(妻) | 相続人(子) | 相続人(子) | 第三者? |
真正な持分 | 1/2 | 1/4 | 1/4 | 0 |
現在の登記 | 1/4 | 1/8 | 1/8 | 1/2 |
判決による更正 | 1/2 | 1/4 | 1/8 | 1/8 |
X1、X2がJに対し、「J部分」の抹消登記を求めた。
原審
保存登記全部の抹消登記〜を〜是認
〜抹消〜請求が意図するところは〜上告人が持分を有しないものに是正すること〜実体的権利に合致させるための更正登記〜を求める趣旨を含む〜(昭和35(オ)1197同38年02月22日二小判〜)。
〜持分を有しない者が〜有する〜として〜保存登記〜,共有者の1人は〜妨害排除として〜実体的権利に合致させるため〜有しない登記名義人に対し,自己の持分についての更正〜を求めることができるにとどまり,他の共有者の持分についての更正〜までを求めることはできない(昭和56(オ)817同59年04月24日三小判〜)。
〜X1の持分を2分の1〜X2の持分を4分の1,上告人及びAの持分を各8分の1とする〜保存登記への更正〜を求める限度で〜認容〜。
元々、X1、X2がJに対し、「J部分」の抹消登記を求める事案だったのに、1審、2審は、(それは登記法上できないので)保存登記全部の抹消を命じた。
Jは上告。本来なら「不受理」でおわりではないと思われますが、最高裁は、きちんと判決の手直しをして破棄自判した*1と言うことのようです。
1審、2審は「それじゃ登記できないでしょ」と言って、全部抹消に変更したのですが、最高裁は、「それじゃ処分権主義に反してダメでしょ。訴外のAの権利まで勝手に抹消してどうするの。」と言うことで、訴えの趣旨を拡張的に解釈することで解決した、と言うように読めます。
あくまで「登記」の問題としての「処分権主義」からの結論と思われ、「所有権の更正」の申請人と言う問題からも興味深いものがあります。
町村先生も「登記請求権では前提〜持分権の帰属について既判力が生じるものではなく〜」と書いておられます。
実体上の問題として、X1、X2の持分を相続の問題としも確認しようとした場合は、必要的共同訴訟と言うことになるのでしょうか(最高裁:固有必要的共同訴訟(相続)について一部の者のみに上訴ある場合 - g-note(Genmai雑記帳))?当初の原告側弁護士はAを訴訟参加させることができなかったのでしょうか?
【町村先生のブログ】
arret:処分権主義: Matimulog
これについてのコメント欄のやりとりもなかなか興味深いと思われます。