Genmai雑記帳

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和歌山地・田辺支判:特定債務の保証人への請求と権利濫用

平成8(ワ)12 求償金請求事件
平成9年11月25日 和歌山地・田辺支判
判示事項抜き書き

 〜保証協会が求償債権を取得後10年余を経て〜保証人〜求償金請求が主債務者の破産手続の終結から5年以内にされたものであっても権利の濫用として許されないとされた事例

id:gen-mai の H91125和歌山地田辺判・H8(ワ)12.pdf
(抽出・加工あり。原文参照)

消滅時効の完成について
1〜主債務者〜は、昭和五九年〜破産〜原告は〜貸金債務の代位弁済後〜〜各金融機関の地位を承継した旨の届出〜配当〜破産手続は平成三年二月〜終結〜本件訴訟は〜五年以内である平成八年二月〜に提起〜

2〜最高裁平成7年03月23日一小判〜債権者が主〜債務者の破産手続において債権全額の届出をし、債権調査の期日が終了した後、保証人が〜全額を弁済した上〜地位を承継した旨の届出〜したとき〜破産者に対し〜求償権の消滅時効は〜求償権の全部について〜名義の変更のときから破産手続の終了に至るまで中断〜

3〜主債務者の〜求償債務につき〜中断〜原債権たる〜貸金債務を行使したものに過ぎず〜求償権自体の行使がなされたものではないとしても〜457条1項により中断は連帯保証人にも及ぶ〜

三 権利濫用について
1 〜主債務者につき破産〜開始〜主債務者に対し求償権を行使しようとしても〜終結しない限り、法的手段を取ることはできない〜求償債務の連帯保証人については〜終結を待つ必要はない〜。

2〜保証人としては〜早い時期に〜請求を受ければ、自らも破産申立をして債務を整理清算し、免責を受けるなど早期に再出発をするチャンス〜何年も放置された後に〜法的請求を受けたような場合〜その間の営業継続により形成された取引先などに突然の迷惑を及ぼすことから、自ら簡単に破産の申立をすることもできず、また〜〜保証人の更生を妨げる可能性も高い〜

3更に〜前記最高裁判例〜全くの第三者の連帯保証人の場合〜破産手続〜進行の状況を当然に知りうるものでもない〜保証人に対する関係で〜中断が生ずるのは、四五七条一項で主〜債務者に〜時効中断が生じた結果〜中断が生じたに過ぎない。

4〜主債務者は、法人〜清算を終え〜個人〜免責手続で〜責を免れる〜一方〜保証人についてのみ、求償債務の責任が残る結果になる〜

〜主債務者には〜更生の機会を与えられながら〜保証人は〜何時までも〜法的責任を負い〜何時でも破産の危険を負担しなければならないという不合理〜。〜第三者の連帯保証人については、早期に〜請求をなし〜保証人の〜債務処理について可能な限りで方向付けをしたうえで〜自身の営業の存続の可否を判断させ、債務の回収を図ることが〜取引の信用の維持のために不可欠〜〜五年以上も経過〜何らの具体的法的手段を取らず放置〜職務の怠慢というしかない。

〜破産終結から五年以内に〜訴訟が提起されたしても、破産手続の進行が遅れて〜求償権を取得した時から、著しい長期間が経過したり、その債権額が著しく高額で、連帯保証人自らも破産の申立に至ることが必然である一方〜破産申立後に第三者との取引が生じ、その第三者に不測の損害を与えるおそれがあり、更に右連帯保証人を破産に追い込むことが苛酷なものと認められる場合には、求償債務の連帯保証人に対する請求が権利濫用として許されない場合がある〜。

6〜破産終結後の平成三年六月〜には〜求償債権額がほぼ確定〜何時にても法的手段を取り得た〜昭和六〇年七月〜と九月〜に代位弁済をしてから、本訴提起の平成八年二月〜まで法的手段をとらず、いつでも破産に追い込める状態に置いておくことは〜甚だしく苛酷な状態〜。〜主債務者〜既に免責を受け、更生への途を辿っている一方、被告〜はこのような苛酷な状態に置かれたうえ、破産になれば、これから再び第一歩からやり直さなければならない〜時効が成立したと直ちに解されないとしても〜本件〜請求は、権利の濫用として許されない〜。

主債務と保証債務の時効 - g-note(Genmai雑記帳)で取り上げておられましたので、読んでみました。
この中で弁護士の永井弘二先生は、
「〜いわゆる包括保証の場合に〜権利濫用として否定されることがあるのは最高裁も認める法理ですが、特定の債務についての保証が権利濫用として否定されたのは極めて珍しいケース〜」と書いておられます。