さいたま地判:「相続させる」遺言と遺産分割協議

平成11(ワ)2300 建物収去土地明渡等請求
平成14年02月07日 さいたま地判  
判示事項の一部

「相続させる」旨の遺言ある場合の遺産分割協議の有効性

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(抽出・加工あり。原文参照)
第2 事案の概要

1〜賃貸借契約〜契約を解除したと主張〜土地の明渡し〜。
被告は〜所有者は原告Aだけであり,その余の原告らは所有権を有していない。〜と主張〜契約解除の効力を争っている。

3 争点と当事者の主張

(被告)〈香川判決趣旨〉〜他の相続人も拘束〜遺産分割を行う余地はない。〜遺産分割は無効〜A以外の原告〜所有権を取得しない。
(原告ら)〜遺産分割方法の指定であるとしても,指定を受けた相続人が,自らの意思で,その遺産に関する権利を放棄することは可能〜,〜引用の判例も,その趣旨まで否定するものではない。遺贈の放棄(民法986条)に準じて〜遺言の利益を放棄できる〜。遺産分割は有効〜。

第3 当裁判所の判断

(1)特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言〜,〜受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして〜死亡の時〜直ちに〜承継される。
 そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても、当該遺産については〜協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨〜

〜このような遺言〜遺言者〜の通常の意思は〜無用な紛争〜を避けること〜,〜異なる〜遺産分割が全相続人によって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。

〜むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当〜。
法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まる〜が,このような遺産分割は〜遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能〜,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明〜。

〜従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていた〜ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできない〜。

 昨日に引き続き、「相続させる」旨の遺言と遺産分割・登記(月刊登記情報) - g-note(Genmai雑記帳)で取り上げておられた判例です。

 この論考においては、判決が、原告主張の「遺言の利益放棄」に触れていないことから、それ自体については否定的と思われると解しているようです。

 私は、むしろ「その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認める」と言う所に注目したいのですが、この便宜的な扱いについての言及が「遺産分割後の帰属者に直接所有権が移転する。」と解している、と読むには少し無理があるでしょうか。