最高裁:自動車引渡請求事件

(2010-06-11分の改記分)
平成21(受)284 自動車引渡請求事件
平成22年06月04日 最二小判
裁判要旨抜き書き

 〜自動車の〜立替払をした者が〜所有権〜留保〜していた場合に,購入者に〜再生手続が開始した時点で〜所有者とする登録〜ない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても〜留保〜所有権を別除権として行使〜許されない。

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上告人,販売会社及び被上告人は〜三者間において〜次のとおり合意〜。
イ 上告人は〜登録名義のいかんを問わず(〜名義が販売会社となっている場合を含む。),販売会社に留保されている〜所有権が〜立替払することにより被上告人に移転し〜完済するまで被上告人に留保〜。
エ 〜期限の利益を失ったときは〜債務の支払のため,直ちに〜被上告人に引き渡す。

原審

〜立替払することにより,弁済による代位〜販売会社が〜留保していた所有権は〜上告人に対する本件残代金債権と共に法律上当然に被上告人に移転〜三者契約は〜確認したもの〜,〜所有権を主張するについては,販売会社において対抗要件を具備している以上〜具備〜を要しない〜

最高裁

三者契約は〜留保〜所有権が代位により〜移転することを確認したものではなく,被上告人が〜債権を担保するために,販売会社から〜所有権の移転を受け,これを留保することを合意したもの〜
〜被上告人が別除権として行使し得るのは,本件立替金等債権を担保するために留保された〜所有権である〜

〜被上告人は〜三者契約により〜残代金相当額にとどまらず手数料額をも含む〜立替金等債権を取得するところ,同契約においては〜完済されるまで〜所有権が被上告人に留保されることや,〜期限の利益を失い〜引き渡したときは〜立替金等債務に充当することが合意されている〜被上告人が販売会社から移転を受けて留保する所有権が〜立替金等債権を担保するためのものであることは明らか〜。

立替払の結果〜代位により被上告人に移転するというのみでは〜残代金相当額の限度で債権が担保されるにすぎないことになり〜当事者の合理的意思に反する〜。

〜再生〜開始〜担保権を有する者の別除権の行使が認められるためには〜一般債権者と〜別除権を行使することができる債権者との衡平を図るなどの趣旨から,原則として〜開始の時点で〜担保権につき登記,登録等を具備している必要がある〜,

〜再生手続開始の時点で被上告人を所有者とする登録がされていない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても,被上告人が,本件立替金等債権を担保するために本件三者契約に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されない

1.これについては、債権を分解して、「残代金部分については弁済による代位」であり、「手数料部分については、三者契約により加算された部分として対抗力が必要」と言う考え方もありえるように思います。その場合は、残代金部分についてのみ別除権行使による優先弁済が受けられることになりましょうか?

2.また、私はそもそも立替払金債権を金銭消費貸借と全く峻別(利息制限法適用除外など)して考えることに違和感をもっており、むしろ、本質は、立て替えた金銭の準消費貸借として、出来得る限り金銭消費貸借と同じ構成で考えるべきではないかなどと思ったりしております。それで行くと、「手数料債権」は、「利息に準ずる部分」と言うことになり、主たる債務について代位弁済が認められた場合は、担保についても法定代位が生じ、当然、別除権を行使できる余地が生ずるのではないかと考えたりします。

3.しかし、問題は「立替」自体に対する考え方で、これを「弁済」と見るから「法定代位」の問題が出てくるのであり、むしろ、「クレジット会社が購入者に代わって販売会社から買って、その代金を貸し付けた。(準消費貸借契約を締結した)」と扱う方が良いのではないかと考えています。この判決の「販売会社から〜所有権の移転を受け,これを留保」と言う部分を、そう読みたいと思います。
4.そう言う意味では、取得した所有権を、購入者に移転せずに、留保する方法より担保としたわけですから、取得に係る対抗力がない以上、別除権の行使はできない、と考えられます。

5.問題は、この判決が「再生手続が開始」した時点について判断していることです。倒産法における考え方としては、破産の場合も同じではないかと思いますが、判決の「別除権の行使が認められるためには,個別の権利行使が禁止される一般債権者と再生手続によらないで別除権を行使することができる債権者との衡平を図るなどの趣旨から」と言う部分を考えると、今後の債務整理業務の中ではどう考えるべきなのでしょうか?
6.以上の別除権の問題は、対抗力の問題であり、債務者とクレジット会社との間の問題としては、約定がある以上、本来(普通の状態の下では)、引渡しを拒めないのは当然と考えます。
7.しかし、こうした引渡行為が偏頗弁済などとなる場合もあるわけですので、この判決の理解の仕方によっては、受任通知を送ったとたん自動車の引き上げを要求され、所有名義もないのに、約定だからと言って直ちにこれに応ずることは、一般債権者を害することにならないか、引渡訴訟がない以上、無条件に引き渡せないのではないか、と言う考えも出てくる可能性があるのではないでしょうか? 
(ま、以上は、私ごときの「勘違い」解釈でしょうが。)

参考:arret:所有権留保と対抗要件: Matimulog
最高裁:留保所有権者の責任(改記) - g-note(Genmai雑記帳)
【金融・企業法務】 動産の留保所有権者がその撤去義務や不法行為責任を負う場合を示した最高裁判決: 田舎弁護士の訟廷日誌(四国・愛媛)
またまた、最高裁判決。今度は所有権留保権者は、窃盗罪覚悟で車の換価処分を迫られる?: 品川のよっちゃんのほうむ話
【金融・企業法務】 自動車販売の所有権留保に関する最高裁の新判断 最高裁平成22年6月4日判決: 田舎弁護士の訟廷日誌(四国・愛媛)