Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:定期建物賃貸借の交付説明書面

(2010-07-21分の改記分)
平成21(受)120 建物明渡等,賃借権確認請求事件
平成22年07月16日 最二小判
裁判要旨抜き書き

 〜定期建物賃貸借契約〜に先立ち説明書面の交付〜につき〜公正証書に説明書面の交付〜を相互に確認〜条項があり,賃借人において〜公正証書の内容を承認していることのみから〜交付があったとした〜違法〜。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

公正証書には〜更新がなく,期間の満了により終了〜について,あらかじめ〜書面を交付して説明したことを相互に確認する旨の条項があり〜,〜公証人役場において〜各自これを承認〜の記載がある。

原審

公正証書に〜確認〜条項がある〜公証人が〜読み聞かせ〜内容に間違いがない旨の確認がされること〜交付があったと推認〜,〜定期建物賃貸借であり期間の満了により終了〜と判断〜

最高裁

〜説明書面の交付〜を確認する〜条項があり〜公正証書の内容を承認した旨の記載もある。しかし〜現実に〜交付〜をうかがわせる証拠は,本件公正証書以外,何ら提出されていない

〜締結に先立ち説明書面の交付があったことについて,具体的な主張をせず,単に,〜締結時に〜定期建物賃貸借であり,契約の更新がなく,期間の満了により終了することにつき説明を受け,また,〜公正証書作成時にも,公証人から〜読み聞かされ〜閲覧〜によって,上記と同様の説明を受けている〜説明義務は履行〜といえる旨の主張〜。

〜締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しく〜単に〜公正証書に〜条項があり〜内容を承認していることのみから〜締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面の交付があったとした〜認定は,経験則〜採証法則に反する〜。

借地借家法

(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借〜、公正証書による等書面によって契約〜ときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこと〜できる。この場合〜第29条1項〜を適用しない。

2 〜あらかじめ〜賃借人に対し〜契約の更新がなく、期間の満了により〜終了すること〜その旨〜書面を交付〜説明しなければならない。
3 〜説明をしなかったとき〜更新がないこととする〜定め〜無効〜。

4 〜期間が1年以上である場合〜、〜満了の1年前から6月前までの間〜に〜満了〜終了〜通知をしなければ〜終了を〜賃借人に対抗〜できない。〜通知期間の経過後〜通知〜通知の日から6月を経過〜後は、この限りでない。

5 〜居住の用〜建物の賃貸借(〜200㎡未満〜に限る。)において、転勤、療養、親族の介護〜他のやむを得ない事情〜賃借人が〜生活の本拠として使用〜困難となったときは〜賃借人は〜解約の申入れ〜できる。〜申入れの日から1月を経過〜終了〜。

6 前2項〜に反する特約〜賃借人に不利なものは、無効〜。
7 第32条の規定〜1項の〜賃貸借〜借賃の改定〜特約がある場合〜適用しない。

(建物賃貸借の期間)
第29条 〜1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

強行規定
第30条 この節の規定に反する特約〜賃借人に不利なものは、無効〜。

(借賃増減請求権)
32条 建物の借賃が、土地〜建物〜租税〜他の負担の増減により、土地〜は建物の価格の上昇〜低下〜他の経済事情の変動により、又は近傍同種の〜借賃に比較〜不相当となったときは、契約の条件にかかわらず〜将来に向かって〜増減を請求〜できる。〜
2項以下、略

 〜「ヘェ?」と思うような判決ですが、弁論主義の問題とすれば、そうなるのでしょうか。
 公正証書の交付をもって、その交付とした場合はどうでしょうか?(これも、「別書面でない」、「あらかじめ」でないからだめでしょうか?)

参考
JAPAN LAW EXPRESS
arret:採証法則違反か弁論主義違反か: Matimulog

 地裁判決では、常に別個独立の書面であることについて疑義ある所とするものがあるようです。(地裁判決解説)もっとも、これも事例判決ですし、この解説でも、不動産実務においては、常に別個独立の書面を作成すべきとしています。

リンク(国土交通省
定期借家制度の概要
定期賃貸住宅標準契約書について
定期賃貸住宅標準契約書について
定期借家権に関するQ&A
定期借家権に 関するQ&A(PART2)・・・「重要事項説明」として、〜説明を行った場合〜説明が行われたことになるか?・・・

研修:「借地借家法」(山内鉄夫先生)でも引用されていました。
研修:「借地借家法」・引用判例等