Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:弁護士法72条(地上げ)

(2010-07-26分の改記分)
平成21(あ)1946 弁護士法違反被告事件
平成22年07月20日 最一小決
判示事項

 〜委託を受け〜賃借人らと交渉〜契約を合意解除〜明け渡させるなどの業務〜弁護士法72条違反〜成立〜事例

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

 不動産売買〜を営むA社〜,ビル〜土地の所有権を取得し,〜賃借人らを〜立ち退かせて〜解体〜更地にし〜新たに建物を建築する建築条件付で土地を売却するなどして〜事業〜。

〜74名の賃借人〜事業用に〜賃借〜。
土地家屋の売買業等を営む被告人B社の代表取締役である被告人Cは〜業務に関し,共犯者らと共謀 〜弁護士資格等を有さず〜に,報酬を得る目的で,業として,A社から〜合意解除に向けた〜交渉を行って合意解除契約を締結した上で〜明け渡させるなどの業務を行うこと〜受任〜。

〜A社から〜報酬〜分と賃借人ら〜立ち退き料等〜分とを合わせた多額の金員を〜一括〜受領〜。〜B社が〜所有者である旨虚偽の事実を申し向けるなどした上〜不安や不快感を与え〜,約10か月〜,〜74名の〜との間で〜合意解除〜立ち退き料の支払義務〜,〜一定期日までに〜明け渡す義務〜を内容とする契約〜交渉して,合意解除契約を締結〜。

所論〜,〜法律上の権利義務に争いや疑義が存するなどの事情はなく,〜受託〜業務は弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」〜ではない〜違反〜成立しない〜。

〜多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を,報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託〜,このような業務は,〜契約期間中〜現に〜業務を行っており,立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し,専ら賃貸人側の都合で〜合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというもの〜,〜合意の成否〜立ち退きの時期,立ち退き料〜をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避〜,弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」〜というべき〜。

〜報酬を得る目的で,業として〜事件に関し,賃借人らと〜生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受け〜賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら〜取り扱った〜,〜72条違反〜。

弁護士法(抽出・加工あり。原文参照)

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士〜でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件〜行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁〜和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋を〜を業と〜できない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合〜この限りでない。

(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
第73条 何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他〜によつて〜権利の実行を〜業と〜できない。

 この事件自体は、暴力団の関係も指摘されるような悪質な地上げ事件だったようですので、そう言う意味では、この判決を素直に理解できるですが、そもそも宅建業は、不動産契約の代理交渉(仲介)などを行なう業であることを考えると、この判決文を拡張解釈してゆくと、宅建業法違反の範囲が大幅に拡がる可能性もあるように思えます。
 その意味では一般的な場合としての「他の法律(宅建業法)に別段の定めがある場合」の範囲の問題についても、もう少し言及してほしかったと思います。

●「宅地建物業者はすべて弁護士法違反になるのか?」・・・井の中の蛙goo

●また、秋山 亘 弁護士は、これについて、司法書士業務との関係について書いておられます。

 司法書士への依頼は、立退請求事件などのように高度に法的な判断を要するような事件においては、事件処理能力や裁判例の十分な理解など法的な知識の観点からして、適切ではないように考えられます。

 と言う表現には、かなり強い抵抗を覚えますが、概ねの内容自体は間違ってはいないと思われますので、ご一読下さい。
http://www.bengo4.com/intro/intro011_285.html
 しかし、上記判決に「法的紛議」とあるように、やはり72条の問題としては、「争訟性の有無」と言う点が重要と思われ、「専門家の能力」だけを比較するような説明方法は、不充分、不適切のように思われました。