Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

東京地判・遺言無効(アルツハイマー型老年痴呆)

平成2(ワ)1615 遺言無効確認請求事件
平成4年06月19日 東京地判
判示事項抜き書き

アルツハイマー型老年痴呆〜記憶障害〜理解力、判断力の低下が著しい状態〜、必ずしも単純な内容ではない本件遺言をなしうる意思能力を有していなかった〜公正証書〜遺言の無効を確認〜事例

id:gen-mai の H04.06.19東京地判・H2(ワ)1615遺言無効.pdf
(抽出・加工あり。原文参照、引用元がocrのため不正確な点あり。)

〜遺言公正証書は〜○医療センターに入院中作成されたもの〜
〜公証人から診断書の提出を求められた〜主治医である〜医師より診断書の交付を受け〜提出〜
〜診断書には〜「老年痴呆は夜間せん妄を伴い,自用を弁じ得ない状態にある」〜

〜公証人に対し,「お世話になります。」と挨拶〜。同公証人は,K子の態度に格別の異常さを感じなかったため,遺言書作成の手続きに入った。
〜逐条毎に読みながらその内容を説明し,K子の確認を得ながら次に進み,一とおり説明し終わった後,総括的な確認を得た上,改めて最初から通して読み聞かせ,再度確認した。

〜医師は〜アルツハイマー型老年痴呆であり〜意識障害の一タイプである夜間譫妄がかぶさった状態〜長谷川式〜スケール〜テストもできない状態で,判断力,理解力は4,5歳程度〜と診断〜。〜「自用を弁じ得ない状態」すなわち自分の意思をはっきりわきまえるとことが障害されている状態に至っていると診断〜。

〜重度の痴呆状態〜遺言が〜必ずしも単純な内容のものではなかったことを併せ考えると〜当時〜遺言〜に必要な行為の結果を弁識,判断するだけの意思能力を欠いていた〜

〜しかしながら〜医師〜によれば〜アルツハイマー型老年痴呆の第2期の状況の下においても,人間的な接触は可能で挨拶程度はできることが認められ〜,要した時間は20分程度〜単に領いたり,「はい」という返事をした程度であり〜具体的な説明,発言をしていないこと〜公証人は〜意思能力について〜診断書中の「自用を弁じ得ない状態にある」との記載を〜夜間に失禁がみられるとの趣旨〜誤解〜,覆すに足りない〜

〜作成当時,アルツハイマー型老年痴呆により記憶障害及び理解力,判断力が著しく低下した状態〜,本件遺言をなしうる意思能力を有しておらず,本件遺言は無効である。

☆遺言と遺言執行〜(松井先生)2−「公正証書遺言」によるべきか〜 - g-note(Genmai雑記帳)で引用されておられましたので、読んでみました。


「せん妄」(譫妄)

意識混濁に加えて幻覚や錯覚が見られるような状態。健康な人でも寝ている人を強引に起こすと同じ症状を起こす。ICUやCCUで管理されている患者によく起こる。