Genmai雑記帳

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名古屋家裁:遺言の執行すべきものない場合の目録交付義務

平成6(家)787 遺言執行者解任申立事件
平成7年10月03日 名古屋家審
判示事項抜き書き

 全遺産を〜相続人に「相続させる」旨の遺言〜、〜移転登記〜全財産の引渡しが終了していて、遺言の執行をなすべきものがない場合〜遺留分権利者から相続財産の目録の調製や管理状況の報告を求められた遺言執行者が〜しない〜任務違背とすることはできない〜解任申立て〜却下〜事例

id:gen-mai の H071003名古屋家審H6(家)787遺言執行者の義務.pdf
(抽出・加工あり。原文参照)

 〜いわゆる「相続させる」旨の遺言〜,〜移転登記〜遺言執行者の就職を待つまでもなく〜できる〜土地〜は,すでに〜登記〜経由〜,〜建物〜は,〜生前中にすでに〜贈与〜。〜もともと〜同居していた自宅〜各引渡も当然に終了している〜
〜したがって〜遺言の執行は〜すべて終了している〜

〜1011条1項は〜相続財産の目録を調製〜相続人に交付しなければならない旨規定〜1012条2項は〜受任者の報告義務〜を準用〜
〜しかし,これら〜はもともとすべて遺言の内容の実現を資するためのもの〜,本件〜申立人のために本件遺言の執行をなすべきものは何もなく〜遺言の執行自体は〜執行者への就職を待つまでもなく実現可能なものばかり〜
〜したがって,そもそも〜就職を承諾したことすら明確ではない。仮に〜就職していたとしても,本件〜,目録を調製〜管理状況を報告させても,遺言の内容の実現には何の意味もなさない〜

遺留分権利者である相続人が遺留分減殺をするために〜全容を知る必要のあることは理解できるが,
〜困難な作業であるにしても〜減殺請求権を行使する相続人自身が調査して,立証すべきもの
〜遺言の趣旨と逆の立場にある申立人が,遺言の執行と関係のないことを遺言執行者に求め,これをしないからといって任務違背とすることはできない〜

 判タ1261の、東京地裁:遺言執行・遺留分なき者への通知、交付義務 - g-note(Genmai雑記帳)についての解説の中で引用してありましたので、読んでみました。

 同解説によれば、目録作成交付の趣旨は、
「一般に、相続財産の状況を明らかにし、相続財産に対する遺言執行者の管理処分権の対象を明確にするとともに、報告義務や賠償責任等の基礎を明確にするため〜」とされており、

 本事例と違って、「全財産が包括遺贈された場合においても、移転登記など遺言執行を要する場合には、〜目録を作成し、〜交付すべき義務を負う〜」(名古屋地判平成13.11.16)と書いてあります。(この場合、登記も共同申請)

 しかし、東京地裁:遺言執行・遺留分なき者への通知、交付義務 - g-note(Genmai雑記帳)判決理由などを読む限り、更に、遺留分権利者がいるような本事例のような場合に、目録交付をしないというのは怖いですね。