Genmai雑記帳

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最高裁:遺言書中の特定の条項の解釈 

昭和55(オ)973 遺贈存在確認等
昭和58年03月18日 最二小判
裁判要旨抜き書き

 遺言の解釈〜文言を形式的に判断するだけでなく〜真意を探究すべき、〜特定の条項を解釈するにあたつても〜条項と遺言書の全記載との関連〜作成当時の事情〜遺言者の置かれていた状況などを考慮して〜趣旨を確定すべき〜。

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(抽出・加工あり。原文参照)
原審

(3)〜遺言書に〜本件不動産について、「被上告人にこれを遺贈する。」(〜「第一次遺贈の条項」〜)とあり、続いて、「被上告人の死亡後は、上告人A1二、訴外E二、〜、〜、〜、〜、〜、〜の割合で権利分割所有す。但し、右の者らが死亡したときは、その相続人が権利を継承す。」(〜「第二次遺贈の条項」〜と記載〜〜、
(1)〜「後継ぎ遺贈」といわれるもの〜
〜第一次受遺者の遺贈利益が、第二次受遺者の生存中に第一次受遺者が死亡することを停止条件として第二次受遺者に移転する、という特殊な遺贈〜、
(2)〜負担付遺贈とも異なり、現行法上これを律すべき明文の規定がない、〜
(4)〜現行法のもと〜第二次受遺者〜法的保護が与えられていない〜〜
(5)〜希望を述べたにすぎないものというべき〜第一次遺贈の条項は、これとは別個独立の通常の遺贈として有効〜

最高裁

遺言の解釈〜文言を形式的に判断するだけではなく〜真意を探究すべき〜、〜多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に〜当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、〜全記載との関連〜作成当時の事情〜遺言者の置かれていた状況などを考慮して〜真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべき〜

〜原審は〜第一次遺贈及び第二次遺贈の各条項のみを抽出〜「後継ぎ遺贈」という類型にあてはめ〜
(1)第一次遺贈の条項の前に、Dが経営してきた〜J材木店のDなきあとの経営に関する条項、被上告人に対する生活保障に関する条項〜F及び被上告人に対する本件不動産以外の財産の遺贈に関する条項などが記載されている〜、
(2)〜本件不動産は右会社の経営中は置場として必要であるから一応そのままにして、と記載されたうえ、第二次遺贈の条項が記載されていること、
(3)〜本件不動産は換金でき難いため、右会社に賃貸しその収入を第二次遺贈の条項記載の割合で上告人らその他が取得するものとする旨〜
(4)〜被上告人が一括して遺贈を受けたことにした方が租税の負担が著しく軽くなるときには、被上告人が全部(又は一部)を相続したことにし、その後に前記の割合で分割するということにしても差し支えない旨記載されている〜

〜右遺言書〜によれば、Dの真意〜は、第一次遺贈〜は〜単純遺贈であつて、第二次遺贈〜はDの単なる希望〜にすぎないと解する余地もないではないが、〜所有権を上告人らに〜移転すべき債務を〜負担させた負担付遺贈であると解するか、〜上告人らに対しては、被上告人死亡時に〜上告人らに移転するとの趣旨の遺贈であると解するか、〜被上告人は遺贈された本件不動産の処分を禁止され実質上は本件不動産に対する使用収益権を付与されたにすぎず〜被上告人の死亡を不確定期限とする遺贈であると解するか、の各余地も十分にありうる〜

〜原審としては、本件遺言書の全記載、本件遺言書作成当時の事情などをも考慮して、本件遺贈の趣旨を明らかにすべきであつたといわなければならない。

〜違法〜又は審理不尽〜〜差し戻す〜。

☆遺言と遺言執行〜(松井先生)8−遺言執行事務の流れ - g-note(Genmai雑記帳)で引用されておられましたので、読んでみました。