Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

東京高裁:遺留分放棄者の相続権主張

昭和52年(ラ)732 遺産分割審判に対する抗告事件
昭和54年01月24日 東京高決
判示事項

 相続開始前の相続の事前放棄は許されず、また〜遺留分放棄の許可まで得ている相続人が相続開始後相続権を主張しても、権利の濫用に当らない〜事例

id:gen-mai の S540124東京高決S52(ラ)732遺留分放棄者の相続権.pdf
(抽出・加工あり。原文参照)

〜Aは遺言〜により相手方に〜財産を相続させない意図を有し、相手方も右意図を理解し〜相続をしない意図のもので、遺留分放棄許可の申立をした〜。

民法が〜相続開始後自由に承認又は放棄することができる旨の選択権を与えた所以は〜相続開始当時における相続人と被相続人その他の利害関係人との人的関係ならびに相続財産の状態を配慮し、これによつて他の掣肘をうけることなく独立かつ自由な意思に基づいて承認又は放棄の決意をなさしめんとした趣旨〜。〜推定相続人が相続開始前に相続放棄をすることは、わが民法の許さないところ〜。
遺留分の放棄が認められていること〜と均衡を失するとの論もあるが〜現行法〜解するほかはない。〜。

3 〜なんらの権利も主張しないとの意思を表示していながら、相続開始後にわかに相続権を主張することは、権利の濫用〜信義則に反するという。
〜しかしながら、相続開始前の相続放棄は法律上なんらの効力も有しない〜、遺留分放棄許可申立の際における〜相続放棄の意思表明は法律的効力を有しない。〜単なる〜縁由にすぎない〜。

〜Aが遺言もしくは生前処分をすることにより〜事実上〜相続をさせないことができたのに〜これをしない〜まま〜死亡し〜相続が開始した以上〜開始前に〜した遺留分の放棄はなんらの法的効果をも生じない〜から、〜自己の相続権を主張するのになんら妨げがない〜。〜正当な権利行使〜

 解説によると、亡父の遺産分割調停において、存命中の母の相続の際には相続しないと約束させ、遺留分放棄の許可を申立て、その結果、多い遺産の分配を受けたのに、母の相続について相続権を主張したようですが、裁判所は、公式どおり、上記の結論を出したようです。
 理論的にはともかく、少し釈然としない結論ですが、先の調停でのやり方が間違っていた、と言うことになりましょうか?

☆遺言と遺言執行〜(松井先生)10−遺留分についての諸問題 - g-note(Genmai雑記帳)で引用されておられましたので、読んでみました。