Genmai雑記帳

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登記原因証明情報7・最高裁:遺産分割調停調書の原因証明情報適格

平成20(行ヒ)29 登記申請却下処分取消請求事件
平成20年12月11日 最一小判
判示事項

 遺産分割調停調書に,相続人が遺産取得の代償としてその所有する建物を他の相続人に譲渡する旨の条項がある場合に〜上記調書〜につき,登記原因証明情報の提供を欠く〜理由に却下〜処分が違法とされた事例

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)
原審

〜本件条項には〜遺産取得の代償として本件建物を譲渡する旨が記載されているものの,それがいかなる法律行為によるものであるかが特定明示されていない。〜
〜有償〜か無償〜か,有償であるとして,だれとの間でどのような対価関係に立つものであるか等が必ずしも明らかではなく〜原因となる法律行為の特定がされて〜ない。〜登記原因証明情報とはなり得ない〜提供を欠く

最高裁

〜本件条項〜は〜遺産分割によって〜遺産〜土地を取得する代償として〜建物を〜譲受相続人に譲渡することを内容とするもの〜
〜その譲渡は,代償金支払義務があることを前提としてその支払に代えて行われるものとはされておらず〜
〜譲渡自体に〜反対給付が行われるものとはされていない〜
〜合意は〜遺産取得の代償として〜建物を無償で譲渡することを内容とするもの〜

そうすると〜調書中の〜条項の記載は,登記の原因となる法律行為の特定に欠けるところがなく,当該法律行為を証する情報ということができる〜却下〜は違法〜

登記原因証明情報6・「物件変動原因の公示と〜(上)」登研736 - g-note(Genmai雑記帳)で紹介させて頂いた藤原先生の記事の中で引用されていましたので、読んでみました。

藤原先生によれば、
「登記の原因と言うのは〜物件変動により〜所有権が移転したと言うだけではなくて、その原因となっている債権行為が有効に存在している〜ことを証するということになる」とされておりますので、
 元々の申請での原因は「遺産分割による代償譲渡」だったそうであり、「物件行為としての「譲渡」を登記原因としたものにほかならず〜法律行為として、債権行為が記載されているとはいえない。」と書いておられます。

 もっとも、代償分割の場合の調停条項には、「代物弁済型」(上記に出てくる表現?)と、「代償物譲渡型」があるようで、それぞれ「代物弁済」又は「遺産分割による贈与」とする給付条項が設けられることが多い、と書かれておられます。

 その上で、上記判決は、後者にあたると解されるが、調書の内容として原因証明情報の適格に欠ける所はないとしたものであり、登記原因についての判断ではない、と書いておられます。