Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

登記原因証明情報8・遺産調停調書の適格性判決(香川先生)登研738

 登記研究H21・8月号(738)に、登記原因証明情報7・最高裁:遺産分割調停調書の原因証明情報適格 - g-note(Genmai雑記帳)に記載の判決についての、香川先生の「解説」が出ておりましたので流し読みしてみました。
「登記原因証明情報に関する最高裁判所(第一小法廷)判決について」
(例によって、ただ、目に留まった所を抜き書きしてみます。(抽出・加工あり。原文参照))

第1 最高裁の判決
第2 登記原因を証する情報
1 登記原因証明情報の提供の趣旨

 概ね、登記原因証明情報5・制度への疑問・登研682 - g-note(Genmai雑記帳)でupした記事と同様のご意見(民法の意思主義と不登記法の共同申請主義から疑問)が書いてあります。 

 (旧法)副本を提出すればたりるのとしているのは、〜申請人は申請書の記載事項の誤りがチェックされるいわば利益が受けられないことになるだけである。〜趣旨として、権利変動の真正又は正確を図る趣旨は必ずしも含まれていない〜

 〜登記官の形式的審査主義の下において、果たしてそのような情報から登記の真正、適格を判断し得るであろうか。おそらくは〜形式的に申請内容と同じであって、いわば実質的には申請情報と登記原因を証する情報が結果的に重複して提供されるに過ぎない運用とならざるを得ないであろう。

2 登記原因証明情報の適格内容

 法も登記官の形式的審査主義を採用〜申請内容どおりの登記原因が生じていることを明らかにした情報であれば足りる。〜共同して提供しているのであるから〜真正、正確な情報と解すべきであろう。

3 本条の「法令に別段の定め」の検討
 不登記令の添付情報欄にある登記原因証明情報について、全体的に検討、説明し、あるいは疑問を呈しておられます。

第3 申請情報の「登記原因及び日付」の記録(記載)

 〜判決においては〜申請人の〜提供した「登記原因及びその日付」〜に関しては、その是非について何ら言及していない。しかし〜提供された登記原因証明情報を適法としているのであって〜、登記原因及び日付は〜(本件調書)に記録されているのであるから、〜「年月日遺産分割による代償譲渡」〜この〜登記原因及び日付も、適法なものとする判断が含まれているものと解するのが当然である。

 しかし、この後、平成21年3月4日照会について、反対の通達が出ていることなどを書いておられ、

 〜本件事案の場合の登記原因の適法な法律的な記載として考えるべきことは、
「贈与」又は「譲渡」かではなく、
「贈与」か「代償譲渡」かである。
 〜調書の内容〜「贈与」と解すべきではなく「代償譲渡」とするのが相当である。「代償譲渡」が法律行為としての当事者間の合意、契約内容に合致したもの〜「贈与」ではないと解すべきである。

 
 藤原先生のお考えとは全く逆の結論のようです。藤原先生は、「債権行為」を書くべきと考えて、「贈与」とすべきと考えておられるけれど、香川先生は、そもそもこの法律行為は「贈与」ではないだろう、と考えておられるように思います。
 「代償」「譲渡」が、「無償性」を基本とする「贈与」ではないだろう、と言う意味で考えると、私もそう言うふうに感じました。

 同じ号の次の記事が、登記原因証明情報6・「物件変動原因の公示と〜(上)」登研736 - g-note(Genmai雑記帳)の続きとして、藤原先生の論説が載っており、なかなか、面白い号の構成となっております。
 しかし、それにしても、香川先生は亡くなったのですよね・・・・