Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

時効援用又は生前売買と相続登記

生前に売り渡した不動産について登記未了のうちに相続登記がされた場合
昭和37年03月08日 民甲638(登研175号P45解説付)

 被相続人が売渡した不動産の売買登記未了の間に、遺産分割によって相続人中の1人が取得し〜登記がされた場合〜相続登記は錯誤を原因として抹消し〜全相続人から所有権移転登記をなすべきであるが〜抹消することなく、相続登記を受けた相続人を登記義務者として〜売買による所有権の移転の登記の申請があった場合でも、受理してさしつかえない。

この場合、登記原因を見ると、相続の日より売買の日が前になり、矛盾した登記のように見えることになりますね。
 この先例が、nsrの時効についてのスレッドで紹介してありました。(nsr会員の方はここをクリックしてnsrにログインし、再度、ここをクリックして下さい。)

 取得時効完成後に相続登記があった場合については、上記と同じような扱いが認められています。(登研401)

 取得時効の完成した農地につき〜時効完成後に開始した相続による所有権移転の登記がされている場合、時効取得者を登記権利者とし、相続人である所有権登記名義人を登記義務者とする時効取得による所有権移転の登記は、受理される。

 これは時効取得だからであり、このような扱いが認められるのは「原始取得」だからなのだ、と私なりに理解していたのですが(時効取得による場合の義務者 - g-note(Genmai雑記帳))、むしろ、上記の売買などと同じ考え方から認められるのかもしれませんね。意外でした。

 時効の場合、「完成時」と「援用時」の義務者が異なる場合が往々にしてあるけれど、登記面のつながり(物件変動の経緯)としては、あくまで「起算日」が問題なのであり、多くの通達・実例においても、「援用時」の日付を問題にしたものは見受けられませんでした。
 従って、相続登記の有無は援用の相手方の特定の問題であり(起算日以前までの相続登記がしてあれば良く)、時効取得登記の申請の際の登記済の有無から言えば、あえて相続登記を行った方が便利だ、などと言うぐらいに考えていたのですが・・・・、

 上記スレッド中の意見によれば、時効援用後に、それを知っていて相続登記を申請することは、司法書士の職責としての問題があると言うことのようで、これまた、意外な落とし穴で、注意したいと思います。