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最高裁:越境部分の時効取得と登記確認(無過失否定事例)

昭和42(オ)597 土地境界確認等請求
昭和43年03月01日 最二小判
裁判要旨抜き書き

 〜登記簿に基づいて実地に調査すれば、相続により取得した土地の範囲が甲地を含まないことを容易に知ることができたにもかかわらず〜調査をしなかつたために〜自己の所有〜と信じて占有をはじめたときは、特段の事情のないかぎり〜右占有のはじめに〜無過失ではないと解するのが相当〜。

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(抽出・加工あり。原文参照)
原審

〜「a番」の土地は〜昭和5年〜家督相続により被告が〜取得〜爾来〜被告のためその実父Dが管理していること、
〜同人は「a番」の土地の範囲は「b番のc」の土地を含めて〜図面〜以北の土地と考え〜訴外F某に賃貸〜同人は右地上に〜図面〜線より約一尺近くも屋根〜が張り出している建物を昭和5年以前に建築所有していたこと、
〜その後Dは右家屋を買受け〜昭和34年頃〜こわしたこと、
〜被告はDを介して「b番のc」の土地を「a番」の〜相続〜した昭和5年〜以来原告から〜抗議のあつた昭和34年頃まで所有の意思を以つて平穏公然無過失に占有〜といえる。〜

最高裁

〜昭和5年〜以前から〜占有〜を認むべき証拠は全く見当らず、かえつて〜(略)。〜判断〜違法〜。

〜境界線がAB線であることは、原審が適法に認定〜
〜原審が〜両地の登記簿謄本、測量図、検証の結果等によつて認めたものであるから、登記簿に基づいて実地に調査すれば〜境界線がAB線であることを容易に知り得たことがうかがえる
〜被上告人が相続当時〜境界線がAB線であることを確認することは困難でなかつたといわなければならない。〜
〜被上告人が〜a番の土地の一部で自分の所有に属すると信じたとしても〜他に特段の事情のない限り、無過失であるとはいえない〜

 登研742号が、短期時効取得の原因証明情報に「無過失であることを基礎づける具体的な事実の記載を求める」とした時に根拠とした判決です。
当然upしていたと思っていましたが、まだだったのでupしました。

 判決自体について言えば、「特段の事情の主張がなかったのだから判決。」と言うのは、まあ、弁論主義からすると有り(?)なのかも知れませんが、原審の境界認定について、「容易に知り得たことが『うかがえる』」と言う程度で(これも原審を読んでないので本当はきちんとわかったのかも知れませんが)判決するのではなく、このケースの場合として「容易に知り得たかどうか」を審理するために差戻す、と言うのが本当のような気がします。(たぶん、例によって、民訴のわからない浅学な私ごときの誤解なのでしょうが)

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