Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

短期時効取得の原因証明情報における無過失の記載

最高裁:越境部分の時効取得と登記確認(無過失否定事例) - g-note(Genmai雑記帳)について、
 短期時効取得の登記原因証明情報の書き方として、現在は、「無過失であることを基礎づける具体的な事実」の記載を求められます。
 この問題は、結局、「登記原因証明情報の制度・趣旨とはどう言うものか」(必ずしも理論的に整理されきってないと思っておりますが)、と言う問題なのだとは思いますが、

 少なくとも、登記義務者(時効を援用された側)が作成者となる場合の原因証明情報に、相手方の援用行為に過失がなかったことの「具体的な事実」を書けと言うこと自体が無理な話しだと思っております。(訴訟上、援用者が立証すべきことであると言うこととは別問題です。)

 作成すると言う「行為自体」で、相手方の請求(原因)を「認諾」している中で(つまりは無過失についての反論もない中で)、何かを書けと言われても、それこそ「消極証明」のようなもので、「基礎づける具体的な事実」(あるいは上記判決文の「特段の事由」)など書きようがないと考えるのが普通ではないでしょうか?

 実際に「登記官からみた登記原因証明情報作成のポイント」と言う書籍の中で、上記「無過失であることを基礎づける具体的な事実」として書いてある例を見ても、単に、「〜登記簿、公図等の調査及び現地調査の上、〜(自己の所有)と信じ〜」としか書いてなく、これだけで、なんで「無過失であることを基礎づける具体的な事実になるんだ??」と思わざるを得ず、単に上記判決文の「文言取り」をしているだけじゃないか、と言いたくなります。

 無過失であるかどうかの判断は、具体的なケースにおける、占有の主体、客体、事情などによって、非常に変わってくるものであり、それらを総合的に考慮して結論づけるべきものだと思います。
 我々のように、日々、登記や公図、測量図の少なからぬ間違いを目にしている者にとって、また、それを前提とする日常取引の実際を知っている者にとっては、登記の確認をしてないことのみをもって直ちに過失だとは言えないようなケースは珍しいことではないと思います。

 結局の所、上記のような「登記」官としては、単純に、「登記を確認してなければ有過失」と区分したいのではないかと思ってしまいます。
 実際、「無過失」のような主観的な要件は、「解釈」の問題となりますので、形式的審査主義を取っている不動産登記制度になじみません。
どだい無理な話しをしているように思えます。

 ま、そもそも、登記官の「一部」に、登記原因証明情報は「登記官に対して物権変動を『証明する』もの」などと言う大誤解があるのが元々の原因のように思えますが・・・