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最高裁:境界訴訟提起による時効中断の効力

昭和58(オ)216 土地所有権移転登記手続請求事件
平成元年03月28日 最三小判
裁判要旨抜き書き

 〜甲が、乙主張の境界を越えて隣接地の一部を占有〜、〜乙が甲による〜時効完成前に〜提起した境界確定訴訟において、乙主張のとおり〜境界が確定されても〜併合審理された乙の甲に対する土地所有権に基づく〜明渡請求が〜乙の所有権が否定された結果棄却された場合には〜境界確定訴訟の提起による〜時効中断の効力は生じない〜

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(抽出・加工あり。原文参照)

・a番bはEの所有、本件土地はa番bから分筆
・a番cはa番dの一部をGがa番bの土地に隣接する41坪の分筆を受けて取得
・当時はa番bが若干高く境界は石垣によつて判然
・Gは境界線を越えて高く盛土、石垣も不明となり、外観上はa番cの一部であるかのように見える状態となつた
・DはGから本件土地を含む土地をa番cとして買い受け居宅の敷地として占有
・EはDを相手取つて訴え境界確定を求めるとともに所有権に基づき、本件土地のうち本件土地部分の明渡を求めた
・Dは境界主張とともに、本件土地部分はa番cの土地の一部として買い受けたもので、占有の始め過失はなく、昭和29年から10年間占有、時効取得主張(「前訴」)
・前訴控訴審はE主張の境界を確定。明渡請求については本件土地部分の所有権はDの所有に帰したとして請求を棄却(「前訴確定判決」)

原審

(二)〜20年の取得時効を主張しているが、Eは〜期間満了前〜に〜境界確定を求める前訴を提起〜判決を得ている〜中断〜、
(三)〜前訴確定判決は〜併合審理された本件土地部分の所有権に基づく明渡請求に関しDの10年の取得時効の抗弁を認めて〜所有権をDが取得した旨認定判断〜、
判決理由中のそれにすぎないから原審を拘束するものではなく〜、独自に判断〜10年の取得時効は認められないとの結論に至つた〜
〜境界確定部分は〜一般的な境界確定判決をした結果となつている〜前訴境界確定訴訟提起に〜中断〜効力を認めることの妨げにならない、

最高裁

一般に〜相隣接地の一方〜が、境界を越えて隣接地の一部を自己の所有地として占有し〜時効〜取得〜主張している場合〜完成前に境界確定訴訟を提起していたときは〜訴えの提起により〜時効は中断〜(〜昭和14年(オ)1406同15年7月10日判決〜昭和34年(オ)1099号同38年1月18日二小判〜)、
〜占有部分の明渡を求める請求が〜併合審理されており〜右占有部分について〜所有権が否定され〜明渡請求が棄却されたときは、たとえ〜乙の主張〜とおりに〜境界が確定されたとしても、右占有部分については〜中断の効力は生じない〜。

けだし〜中断の効力は〜乙の〜所有権が否定され右請求が棄却されたことによつて、結果的に生じなかつたものとされる〜
乙への帰属に関する消極的判断が明示的にされた以上〜境界確定訴訟の関係においても乙の所有権の主張は否定されたものとして、結局〜中断の効力は生じない〜。

〜本件土地の一部である本件土地部分について〜10年の取得時効を肯定してEの所有権を否定し〜明渡請求を棄却すべき〜判決がされたというのであるから〜中断の効力は、本件土地のうち本件土地部分を除くその余の部分については生じているものの、本件土地部分については生じていない〜

〜請求棄却の判決がされたことにより取得時効中断の効力が発生しないとされるのは、当該判決がされたことによるものであるから、前訴におけるDの10年の取得時効を肯定した認定判断が理由中のそれであつて原審を拘束するものでなく、原審としては右取得時効を否定する判断に達したからといつて、本件土地部分について〜中断の効力を肯定する理由とすることはできない〜

〜本件土地部分に係る部分について〜破棄〜、本件土地のうち本件土地部分を除くその余の部分についての原審の判断は〜正当〜
〜破棄部分について〜更に審理〜右部分につき〜原審に差し戻す〜。

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