Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:農地・契約後の周辺変化+宅地化

昭和44(オ)498 本訴土地所有権移転登記手続請求、反訴〜仮登記抹消登記手続請求
昭和44年10月31日 最二小判
裁判要旨抜き書き

〜農地〜売買契約締結後に〜周辺一帯が都市計画区域に指定〜順次宅地として分譲されるなど客観的事情が変化〜かつ〜買主が〜地盛りをして売主の承諾のもとに建物を建築〜完全に宅地に変じた場合〜売買契約は、知事の許可なしに効力を生ずる〜

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

〜契約は〜農地であることを前提としてなされたもの〜昭和33年11月〜までに知事に〜許可申請手続をとること〜許可がない場合には〜解除しうる旨の特約〜、
〜契約は〜居宅を建て〜宅地〜利用するためのもの〜締結の翌日〜代金の九割弱の支払〜土地を引渡し、〜昭和34年11月ころから〜北西部分に地盛り〜〜敷地として整理し〜居宅を建築、〜36年春頃〜東北部分に庭園を造成〜、上告人〜建築承諾書を交付〜地盛工事等についても何らの異議をさしはさまなかつた〜

〜被上告人〜は、余程の事情がないかぎり〜契約が解除される危険を犯してまでも知事の許可〜手続を拒む理由はない〜から、上告人において〜申請〜協力義務不履行を理由に〜解除権を行使するためには、自ら〜許可申請に必要な書類を整える等自己の尽すべき準備を了し〜被上告人に通知するとともに、所轄機関への出頭期日を連絡して〜協力を求めることを要し、何らこの挙に出ることなく一方的に〜不履行責任を問うことは許されない〜。

〜元来原野〜未開墾の湿地帯〜、終戦直前ころ排水工事が施された結果、昭和27、8年ころから〜約半分〜が野菜畑〜昭和34年11月ころまでは〜残余の部分は湿地のため荒地〜放置〜
〜昭和25年12月〜附近一帯は都市計画区域に指定〜契約当時〜幹線道路〜に通じ〜道路沿いに繁華街が形成〜都市計画区域内は次第に宅地化〜周辺も大部分が宅地用として分譲〜その一環として〜売り渡されたもの〜

〜契約にあたり〜農地であることを前提〜とはいえ〜宅地〜利用〜を了承のうえ、宅地〜の取引相場に従つて〜売買価格を決定〜翌日には〜代金の九割弱を受領〜〜引渡し〜建築承諾書を交付〜など〜建築に協力〜、被上告人は〜北西部分に地盛〜敷地として整地したうえ〜居宅を建築〜同36年春頃〜東北部分に庭園を造成〜荒地〜放置されていた南側にも大量の地盛り〜自家菜園〜今日に至つている〜

 〜土地の客観的状況〜売買の経緯〜によれば〜元来原野〜性格を有しており〜契約〜当時〜一部に農地〜部分があつたにせよ、周辺土地の客観的状況の変化に伴い次第に宅地としての性格を帯びるに至つており〜後の地盛りなどによつて、完全に宅地に変じたもの〜
〜売主〜も〜客観的事情を前提としたうえ〜宅地として〜売り渡し、自らその宅地化の促進をはかつたもの〜

このような事情のもと〜農地法5条〜許可が〜効力〜要件であつたとしても〜契約は〜宅地に変じたとき〜要件は不要に帰し、知事の許可を経ることなく完全に効力を生ずるに至つたもの〜

★非農地化と許可(柳教授) - g-note(Genmai雑記帳)で引用されていましたので読んでみました。

柳先生の解説には、
「周辺の状況が変化したために〜買主は農地を宅地にしなければならない事情があったと〜窺うこともできる。 そのため〜買主だけに責めに帰すべき事由があったとはいえないとされた。」とあり、
 そのとおりなのでしょうが、当初から宅地化を目的として契約したわけですから、結果的にそう言う事情にもなったと言うことでもあり、やはり「現況主義ないし客観主義」をベースにして、帰責事由の弱さなどを考慮していると言うことのように思えます。

 また、前段の判断からも、そもそも売主が契約の無効を主張すること自体が信義則に反する、と言った点からのバイアスもあるように感じました。

【名城大学・柳勝司教授の論説】61-4-62