Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

横浜地裁:非農地化の帰責事由

平成19(ワ)4552、平成20(ワ)394 条件付所有権移転仮登記抹消〜請求、同反訴〜
平成21年4月17日 横浜地判
要旨抜き書き

 〜農地法5条許可を条件とする〜売買〜につき、〜盛土がされ、すでにコンクリートが敷き詰められて駐車場として利用されていること、同土地を含む周辺〜一帯の公園化計画が進行し、農業振興地域農用地区域からの除外手続が進められている等の事情がある場合〜非農地化したから〜許可なしに所有権の移転の効力が生じる。

(抽出・加工あり。原文参照)

原告ら〜「〜農地法五条の許可を条件とする〜条件付所有権移転仮登記〜がされている。〜許可申請協力要請権は時効消滅〜援用した。」〜仮登記の抹消〜を求め〜
反訴〜、「被告は〜原告らの父〜亡A〜から〜買い受け〜代金〜全額を支払った。原告らは、平成19年5月〜コンクリートで固め、非農地化した。〜仮に〜非農地化されていないとしても〜昭和36年11月〜以降〜20年以上〜占有〜取得時効を援用〜」

〜被告は、昭和36年〜売買契約を締結〜当時〜農用地区域〜。
〜平成8年〜、被告が〜土盛等工事を行い、〜同19年5月ころ〜、F建設が〜草木等を伐採し、アスファルトを含むコンクリート砕石等の砂利を〜敷き〜ローラーで固めて均し〜駐車場工事を行った〜

〜この間、横浜市は、同11年〜公園計画を立案〜14年7月〜被告に対し〜農振農用地区域の除外手続を進め〜順次買収を進めている〜

〜公園計画区域の性状も徐々に変更されており、また〜土地の形状も変更されたといえる〜
〜遅くとも〜駐車場工事が行われた同19年5月〜以降〜耕作の目的に供される土地ではなくなり、非農地化された〜

〜被告は〜家屋を建築する目的で〜土盛等工事〜途中で〜建築できないことが判明〜、結局〜建築はしておらず〜土盛等工事によって〜恒久的に農地でなくなったとまでは認め難い。また〜Aは、不動産業者として〜建築〜宅地に変更できる旨を〜述べていたものと認められる。

〜非農地化の要因は、被告の〜土盛等工事のほか〜原告Xから駐車場として使用する目的で本件土地を賃借したF建設が本件駐車場化工事を行ったことや〜公園計画の進展等にもある上、Aは〜宅地に転用可能な土地として被告に売却しているのであるから、被告に〜非農地化について帰責性があるということはできない。

〜売買契約締結後に〜非農地化したことにより〜売買契約は、遅くとも平成19年5月〜には農地法五条の許可なしに効力を生じた〜

★非農地化と許可(柳教授) - g-note(Genmai雑記帳)で引用されていましたので読んでみました。

 そもそも、「無許可転用」について、「買主側の帰責性」を問題とする考え方は、柳先生によると、指導的判決となった「最高裁昭和42年10月27日判決」の解釈から、「〜農地を宅地化するという脱法行為をしている売主は〜買主に対して〜許可を受けるべきであるという主張をすることは、 クリーンハンドの原則からも、許されない〜。」と言う点から出ていると思われるのですが、

 この論説に取り上げられている最高裁判決は、いずれも買主の主張を認めたものであり、
「買主の帰責事由〜については、 厳しい判断をしてはいない」と書かれており、
私などの感覚では、買主による、強度に脱法的な転用行為が、私法的にも、その取引を否定すべきような(信義則や公序良俗などの一般的規範に反するような)事例でない限り、原則として「現況主義ないし客観主義」をベースに判断している(一応、そのような場合の否定可能性を残している。)などと思えます。(浅学解釈)

 一方、今回の下級審は肯定例ですが、この論説には、下級審による否定例も書いてありますので、今後少し覗いてみようと思います。

【名城大学・柳勝司教授の論説】61-4-p61