Genmai雑記帳

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奈良地裁:判決による相続登記と戸籍不足

内藤先生のブログで知りました。・・・感謝)

平成26(行ウ)18 不動産登記申請却下処分取消請求事件
平成27年12月15日 奈良地裁
裁判要旨

 擬制自白により認定された調書判決書も、相続登記の登記原因証明情報として「他に相続人がいないことを証する書面」と言える。

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ウ〜登記実務上〜戸籍・除籍謄本が提出できない場合〜市〜長の証明書に加え〜「他に相続人はいない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付〜)を提出する取扱いによっても差し支えない〜とされている(昭和44年3月3日民甲373号〜,昭和58年3月2日民三1311民三〜)。
エ さらに〜確定判決の理由中に〜当該相続人らのみである旨の認定がされている場合は〜判決正本の写しを相続を証する書面(登記原因証明情報)として取り扱って差し支えないものとされている(平成11年6月22日民三1259〜)。

〜別件訴訟被告らは,いずれも〜第1回口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しなかった。
奈良地裁は〜弁論を終結〜請求原因事実を争うことを明らかにしない〜自白したものとみなし〜判決書の原本に基づかないで,原告の請求を認容〜判決を言い渡し〜書記官は,判決書の作成に代えて,主文,請求及び理由の要旨等を記載した〜口頭弁論〜調書〜作成〜

第3 当裁判所の判断

〜請求原因中には「Aの相続関係は別紙関係図のとおりである。」旨の事実もある〜。
一般に,共同相続人に対して〜移転登記手続請求をする場合には,共同相続人全員に対して請求をする意思で訴えを提起するのが提訴者の通常の意思であり〜被告ら以外にAの相続人が存在することをうかがわせるような記載は見当たらない〜
「Aの相続関係は別紙関係図のとおりである。」旨の主張は,「Aの相続人は別紙関係図に『相続人』と記載された者のみである。」〜旨の主張を含むもの〜少なくとも黙示的に同事実が主張されている〜
〜そうすると,本件調書判決は〜理由中に〜Cの相続人が本件被代位者のみである旨の認定がされているものということができる〜本件回答に従い,相続人全員の証明書に代えて,その正本の写しを〜原因証明情報として取り扱って差し支えない〜

2 被告は,当事者双方が裁判に出席して審理の対象について実質的に争われ,証拠調べ手続が執られた結果,判決の理由中で証拠に基づき「他に相続人がいないこと」が明確に認定されていれば,そのような判決書は戸籍・除籍謄本と同程度の証明力を定型的に有するものと認められるが,擬制自白により認定された調書判決は,被告とされた者が何ら争わず,また,証拠に基づかないまま,原告の主張どおりに被告とされた者の自白が擬制されて請求が認められるという相対的なものにすぎないから,他に相続人が存在する可能性を払拭できず,戸籍・除籍謄本と同程度に定型的証明力を有するものとはいえないことに照らせば,本件回答にいう確定判決とは,その理由中において,証拠(弁論の全趣旨を含む。)に基づいて,他に相続人がいないことが認定されているものに限られ,擬制自白により認定された調書判決はこれに当たらない旨主張する。

しかし〜本件回答は,「確定判決の理由中において甲の相続人は当該相続人らのみである旨の認定がされている場合は,相続人全員の証明書に代えて,当該確定判決の正本の写しを相続を証する書面として取り扱って差し支えないものと考えます。」というものであって,上記事実認定が証拠によらずに自白又は擬制自白によってされている場合を特に除外するものではなく,本件回答の解説においても,そのような限定解釈はされていない〜

〜そもそも,一般に,当事者の一方が主張する事実の有無について,他方当事者が実質的に争って証拠調べ手続が執られた結果,当該事実が認定された場合の方が,他方当事者が当該事実を自白し又は擬制自白が成立した結果,当該事実が認定された場合よりも,実体的真実により合致する蓋然性が高いなどといった経験則は認められない〜

〜「他に相続人がいないこと」についても,自白又は擬制自白(これらは,被相続人と相続人の身分関係を最もよく知り得る立場にある者らの訴訟態度によるものである。)によって同事実が認定された場合の方が,証拠又は弁論の全趣旨によって認定された場合よりも,実体的権利関係に合致する蓋然性が乏しい(すなわち,他に相続人が存在する可能性が高い。)などとは認められない。

そうである以上,擬制自白により認定された調書判決についても,戸籍・除籍謄本と同程度に定型的証明力を有すると認められる真正の担保力の高い情報として〜原因証明情報に当たるものと解するのが相当〜。