Genmai雑記帳

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最高裁(新):認知症家族の責任

平成26(受)1434 損害賠償請求事件
平成28年03月01日 最三小判
裁判要旨抜き書き

 線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻と長男の〜損害賠償責任が否定された事例

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

1〜認知症〜A(〜91歳)が〜線路に立ち入り〜列車に衝突〜死亡〜事故〜Aの妻〜Y1〜当時85歳)及びAの長男〜Y2〜に対し〜損害賠償〜を求める事案〜

(1)〜Y2その妻〜Bは,昭和57年に〜横浜市に転居〜他の子らも〜独立〜
(3)〜平成12年〜頃〜被告ら及び〜Y2の妹〜Cは,Aが認知症〜と考えるようになった。
〜話し合い〜Y1は〜80歳であって1人で〜介護〜困難〜介護の実務に精通しているCの意見を踏まえ,Bが単身で横浜市からA宅の近隣に転居し〜Y1によるAの介護を補助することを決めた。〜
〜Bは,A宅に毎日通って〜介護〜宿泊することもあった。〜Y2は〜1箇月に1,2回程度a市で過ごす〜事故の直前〜には1箇月に3回程度週末にA宅を訪ね〜報告を受けていた。
(10)〜平成19年2月,日常生活に支障〜常に介護を必要〜場所の理解もできない〜
〜話し合い〜特別養護老人ホームに入所〜検討〜Cが「〜入所させると〜更に悪化〜。〜家族の見守りがあれば自宅で過ごす能力を十分に保持〜。〜ホームは入居希望者が非常に多い〜少なくとも2,3年はかかる。」旨の意見〜引き続きA宅で介護することに決めた。

〜事故当時,Bは,午前7時頃にA宅に行き,Aを起こして着替えと食事〜福祉施設に通わせ〜A宅に戻った後に20分程度Aの話を聞いた後,Aが居眠りを始めると〜台所で家事〜を日課〜。〜Aが眠ったことを確認してから帰るようにしていた。

(12) 〜午後4時30分頃〜福祉施設の送迎車で帰宅〜B及び〜Y1と一緒に過ごしていた。その後,Bが自宅玄関先でAが排尿した段ボール箱を片付け〜Aと〜Y1が〜2人きりに〜,〜Y1がまどろんで〜隙に〜事務所部分から〜外出〜。〜列車に乗り〜隣の駅〜で降り〜ホーム下に下りた〜午後5時〜分頃〜事故〜。

原審

〜Y1に対する〜請求を一部認容〜Y2に対する〜請求を棄却〜。
(1)〜配偶者が精神上の障害により精神〜障害者福祉〜法〜5条〜精神障害者となった場合には,同法上の保護者制度〜の趣旨に照らし〜現に同居して〜いる他方の配偶者は,夫婦の協力及び扶助の義務(民法752条)〜が法的に期待できないような特段の事情のない限り,夫婦の同居,協力及び扶助の義務に基づき〜監督義務を負う〜民法714条1項〜の法定の監督義務者に該当〜。〜Aと同居〜妻〜Y1は〜法定の監督義務者であった〜。

〜Y1は〜重度の認知症〜場所等〜見当識障害〜外出願望を有していることを認識〜のに〜事務所出入口のセンサー付きチャイムの電源を入れておくという〜措置をとらなかった。〜Y1が,監督義務者として〜怠らなかったとはいえず〜〜。

(2)〜Y2が〜負っていた扶養義務は経済的な扶養を中心とした扶助の義務〜引取義務を意味するものではない上,実際にも〜Y2は〜別居〜,〜成年後見人に選任されたことはなく〜保護者の地位にもなかったことに照らせば〜
〜Y2が〜生活全般に対して配慮し〜身上を監護すべき法的な義務〜認められない。〜Y2は〜法定の監督義務者〜とはいえない。また〜Y2は,20年以上も〜別居〜していたこと等に照らせば〜事実上の監督者〜ともいえない。

最高裁

(1)ア 民法714条1項〜は,責任無能力者が他人に損害を加えた場合には〜監督する法定の義務を負う者が損害賠償責任を負うべきものとしている〜
〜法定されていたものとして〜改正前の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律22条1項により精神障害者に対する自傷他害防止監督義務が定められていた保護者や,〜
〜改正前の民法858条1項〜禁治産者に対する療養看護義務が定められていた後見人が挙げられる。

しかし,〜自傷他害防止監督義務は〜廃止〜また,後見人の禁治産者に対する療養看護義務は〜改正後の民法858条において成年後見人が〜被後見人の心身の状態〜生活の状況に配慮しなければならない旨のいわゆる身上配慮義務に改められた。

〜この身上配慮義務は〜契約等の法律行為を行う際に〜身上について配慮すべきことを求めるものであって〜事実行為として〜現実の介護を行うことや〜行動を監督〜を求めるものと解することはできない。〜平成19年当時〜保護者や成年後見人であることだけで〜法定の監督義務者に該当する〜できない。

民法752条は,夫婦の同居,協力〜扶助の義務〜規定〜〜夫婦間において相互に相手方に〜負う義務〜第三者との関係で〜何らかの作為義務を課するものではなく,〜同居の義務〜は〜性質上履行を強制〜できないもの〜協力の義務〜はそれ自体抽象的なもの〜。〜扶助の義務は〜生活を自分自身の生活として保障する義務〜と解したとしても〜直ちに第三者との関係で相手方を監督する義務を基礎付けることはできない。〜
同条の規定をもって714条1項〜義務〜ということはできず,他に夫婦〜が相手方の法定の監督義務者であるとする〜法上の根拠は見当たらない。

したがって,精神障害者と同居〜配偶者〜民法714条1項〜「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない〜。

ウ 〜Y1はAの妻であるが〜(〜事故当時〜保護者でもあった〜,以上〜Y1が〜「監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない〜
また〜Y2はAの長男〜,〜「監督する法定の義務を負う者」に当たるとする法令上の根拠はない〜。

(2)ア もっとも,法定の監督義務者に該当しない者であっても〜身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けて〜監督を現に行い〜態様が単なる事実上の監督を超えているなど〜監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合〜衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視〜714条〜損害賠償責任を問うことができるとするのが相当〜
〜法定の監督義務者に準ずべき者として,同条1項が類推適用〜
(〜昭和56年(オ)1154同58年02月24日一小判〜)

その上で,ある者が,精神障害者に関し〜法定の監督義務者に準ずべき者〜かは,〜自身の生活状況や心身の状況などとともに〜障害者との親族関係の有無・濃淡同居の有無その他の日常的な接触の程度精神障害者財産管理への関与の状況など〜の関わりの実情〜心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容,〜監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して〜現に監督しているかあるいは監督〜が可能かつ容易であるなど衡平の見地から〜責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断すべき〜。

イ〜本件〜,Aは,平成12年頃に認知症のり患をうかがわせる症状を示し,平成14年にはアルツハイマー認知症にり患していたと診断され,平成16年頃には見当識障害や記憶障害の症状を示し,平成19年2月には〜要介護4〜(なお〜1人で外出して数時間行方不明になったこと〜合計2回だけ〜)。
〜Y1は,長年Aと同居〜妻〜〜Y2,B〜Cの了解を得てAの介護に当たっていたものの〜事故当時85歳〜要介護1の認定を受けており,Aの介護もBの補助を受けて行っていた〜。
〜Y1は〜第三者に対する加害行為を防止するためにAを監督することが現実的に可能な状況〜ということはできず〜監督義務を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。
したがって〜Y1は,精神障害者であるAの法定の監督義務者に準ずべき者〜ということはできない。

ウ 〜Y2は〜Aの長男〜妻BがA宅の近隣に住んで〜通いながら〜Y1〜の介護を補助〜,〜Y2自身は,横浜市に居住〜事故まで20年以上〜Aと同居しておらず〜事故直前〜も1箇月に3回程度週末に〜訪ねていたにすぎない〜
〜Y2は〜第三者に対する加害行為を防止するためにAを監督〜可能な状況〜ということはできず〜監督を引き受けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない。
したがって〜Y2も,精神障害者であるAの法定の監督義務者に準ずべき者に当たるということはできない。

結論は同じくしながら、一番大事な所では、裁判官5名中2名が別の意見だったようですね。