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給与差押禁止等に関する意見書(東弁)

給与等債権の差押禁止等に関する意見書 2016(平成28)年3月25日
東京弁護士会 会長 伊藤茂
(抽出・加工あり。原文参照)

1.民執152条1項を改正し、〜「給与等債権」〜について〜一定の金額までは差押禁止とする〜検討すべき〜。
ただし〜151条の2第1項各号〜扶養義務等〜定期金債権〜が請求債権となる場合は〜改正の対象とせず、従前どおり〜152条3項の基準によることが相当〜

2.年金、給与、生活保護費などの差押禁止債権が、受給者の預金口座に振り込まれて、預金債権となった場合に〜差押禁止債権を原資とする預金債権に対する差押を禁止することの立法化を検討すべき〜。

第2 意見の理由

 金銭債権〜強制執行の実効性を確保〜、勝訴判決等を得た債権者が〜財産開示手続について〜見直し〜とともに、〜情報を債務者以外の第三者から取得〜する手続を新たに創設することは、喫緊の課題〜16年には、法制審議会への諮問〜予定〜

〜併せて、債務者を過酷な状況に陥らせることのないよう〜観点〜も、十分に議論を尽くすことが望まれる〜
〜相反〜利益を衡量の上バランスを取るものでなければならない。
〜真に債務者の生活が破綻することのないように検討することは、極めて重要〜

2 給与等債権の差押禁止について

(1) 現行制度の問題点
ア 現行〜152条1項は〜、〜政令で定める額(〜施行令2条〜支払期が毎月〜ときは、33万円)を超えるときは、政令で定める額〜のみ差押が禁止される〜とし、差押禁止の最大限度を定めている
〜逆に、この金額までは〜差押禁止になるという、差押禁止の最小限度の定めは置かれていない。

イ 〜給与等債権の額がどれほど低額であっても〜、4分の1〜金額の差押は可能〜。〜給与〜が月額10万円の場合でも、2万5000円の差押が可能〜。そのため〜生活保護基準をも下回る〜ことがある。また〜生活保護基準を下回る生活をしている世帯の債務者に対してさえ〜差押がされることがある。
〜「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を下回る生活を強いる〜、〜過酷な状況に陥らせる〜。

(2) 一定金額まで給与等債権の差押を禁止すべきこと
〜現行制度の下でも〜153条1項の差押禁止債権の範囲変更の申立〜「生活の状況その他の事情」を疎明〜により、差押禁止〜範囲を拡張〜あり得る。

〜差押命令〜送達〜日から1週間〜(〜155条1項〜取立が可能〜とき)までに、「生活の状況その他の事情」の疎明資料を準備〜、〜153条1項の申立〜とともに、執行裁判所から第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命じてもらう(同条3項)必要〜。
〜容易なことではない。

3 差押禁止債権を原資とする預金の差押禁止について

現行制度〜一部差押が禁止されている給与等債権も〜預金口座に振り込まれて預金債権となった場合〜152条〜を超えて、全額が差押可能〜。
また、年金や生活保護費〜全額が差押禁止〜債権(国民年金法24条厚生年金保険法41条生活保護法58条)も〜口座に振り込まれて預金債権となった場合〜差押が可能〜。

〜もともと差押禁止の対象であったものが〜預金債権となる〜禁止の対象から外れる〜あまりに観念的〜、〜受給者〜その家族の生計を維持し〜生活の保障を確保〜という見地から定められた差押禁止債権の趣旨は、没却〜。
(以下、上記と同様の記述)

(3) 下級審裁判例
東京地裁平成15年5月28日判決〜
「〜当該預貯金の原資が年金であることの識別・特定が可能であるときは、年金〜自体〜差押と同視すべきもの〜差押は禁止されるべき〜」〜

〜広島高裁松江支部平成25年11月27日判決〜
「〜児童手当が〜振り込まれる日であることを認識した上で〜振り込まれた9分後に〜差し押さえ〜実質的に〜児童手当を受ける権利自体を差し押さえたのと変わりがない〜違法〜」〜県に不当利得返還義務を認めている。

給与等債権の差押禁止等に関する意見書|東京弁護士会

至極、ごもっともな意見と思います。
昔、債務整理が多かった頃は、良く困ったことがありました。

丁度、先日、全く久しぶりに(やむを得ず)、債務整理案件を受任した所で、上記「差押範囲の変更」を考え始めていた所です。
また、先月、売掛金(30万円弱)の勝訴判決を得た所ですが、債務者が生活保護を受けているとの情報があり、債権者と上記広島高裁松江の話しなどもした結果、差押を中止しすることになった所です。