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最高裁:別訴債権を自働債権とする相殺の抗弁

昭和62(オ)1385 契約金等
平成3年12月17日 最三小判
裁判要旨

 別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として、相殺の抗弁を主張することは、許されない。

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(抽出・加工あり。原文参照)

係属中の別訴〜訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張〜許されない〜(〜昭和58年(オ)1406同63年03月15日三小判〜

〜民訴法231条(現142条?)〜審理の重複による無駄を避けるためと複数の判決において〜矛盾した既判力ある判断がされるのを防止するため〜

〜相殺の抗弁が提出された自働債権の存在〜不存在の判断が相殺〜対抗〜額について既判力を有する〜こと(同法199条2項(現114条2項?))、
相殺の抗弁の場合にも自働債権の存否に〜矛盾〜判決が生じ法的安定性を害しないようにする必要があるけれども理論上も実際上もこれを防止することが困難であること、

〜を考えると、同法231条の趣旨は、同一債権について重複〜訴えが係属した場合のみならず、既に係属中の別訴〜訴訟物〜債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出する場合にも同様に妥当〜
〜このことは右抗弁が控訴審の段階で初めて主張され、両事件が併合審理された場合についても同様〜。

(一)被上告人は〜代金等合計207万〜円〜の支払を求めて本訴を提起〜、
(二)〜上告人は〜原審〜期日に〜上告人を第一審原告、被上告人を第一審被告とする〜売買代金〜控訴事件において、被上告人に対し〜売買代金1284万〜円及び〜損害金請求権をもって、前記(一)の債権と対当額で相殺〜抗弁を提出〜。
〜上告人の右主張は、係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張するものにほかならない〜許されない〜

以下、wikipedia二重起訴の禁止

訴えが先で相殺の抗弁が後の場合

 訴えが先の場合、かつては、許されるという見解が通説〜。相殺の抗弁は訴えの提起ではなくあくまでも抗弁〜しかも相殺の抗弁は他の抗弁より後に審理・判断されるため、二重審理・既判力抵触が起きるかは不確実であるからである。
〜しかし、近年では〜許されないという見解の方が多数説〜。〜認めないと相殺の担保的機能への期待が害されるという指摘もある。
判例は〜昭和63年3月15日〜+〜平成3年12月17日〜で、相殺の抗弁には供せない〜
〜一方で〜平成10年6月30日〜、前訴が一部請求の事案〜残部による相殺の抗弁を認めた。〜担保的機能へのシフトだとする見方もあるが、一部請求では訴訟物が分断されるという一部請求の判例理論に従っただけとも解しうる。

相殺の抗弁が先で訴えが後の場合

 通説は相殺の抗弁が先の場合を許容する〜。〜判例がない。下級審〜は〜分かれている。

最高裁(新):本訴請求の時効消滅を条件とする反訴における相殺の抗弁 - g-note(Genmai雑記帳)の中で引用されている判例です。
銀行法務№799によると、平成27年の判決は、この判決の射程外と判断されたものだろう、とのことです。
なかなか難しいですね。
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