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質疑応答:「相続分の放棄」あるときの遺産分割調停・審判による相続登記

今月の登記研究(№819平28・5)の質疑応答に、(わたくし的には、)注目の回答が出ておりました。
(抽出・加工あり。原文参照)(★原文・配信者向けパス付

Aの相続人B,C〜D〜遺産分割協議が未了のままDが死亡〜その相続人がE〜Fである場合〜
〜遺産分割調停〜B及びCが手続から排除され,Eが単独でA所有の不動産を取得することとなったとき〜
〜Eは〜調停調書又は審判書を添付して〜所有権の移転の登記を申請〜できる。

〜Eが甲不動産についてB,C及びFに対し遺産分割調停を申し立てた結果,

調停調書or審判書の当事者の表示に
「相手方であったB及びCについては,自己の相続分を放棄したことから,当事者である資格を喪失したと認められ,本件手続から排除された。」と記載され,

かつ,調停条項or審判主文に
「申立人は,甲不動産を単独取得する。」と記載されているとき〜

〜Aの相続に関し,B及びCが相続分の放棄をしたことにより,Dがいったん甲不動産をAから相続したことが明らか〜,Eは,当該調停調書or審判書を添付して,
「平成年月日(A死亡日)D相続,平成年月日(D死亡日)相続」
を〜原因として〜所有権移転の登記の申請〜できるものと考えますが〜

御意見のとおり〜

前々から、
「相続分の放棄」は民法に規定あるものでもなく、それ自体には遡及効もないため、その効果は「単なる(相続)共有持分の放棄」としてとらえるしかなく、このような場合、一旦、法定相続登記をした上で、B及びCの持分をAに移転するしかないのではないか、その場合、調停調書などによることによって、B及びCの印鑑証明を省略可能か、

などと悩んでいたのですが、上記が可能であるとすると、大変、便利かと思います。

民法条文にないことだけをとらえて、家裁で良く行われている「相続分の放棄」の効果を、厳しく限定して考える必要はないと思われますので、「相続分の譲渡」の場合と同様に、

「その後、当事者としての資格を失った者を除いた相続人による遺産分割協議が成立した結果、その遡及効により〜」と考えれば、
誰にも大変、理解しやすく、また、無用な手続上の煩雑さを避けることもできて、大変、結構だと思います。

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