Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

東京高裁:第三者を監護者と定めることができる場合

昭和51年(ラ)第636号 子の監護に関する処分審判に対する即時抗告申立事件
昭和52年12月09日 東京高決
要旨抜き書き

1〜親でない第三者を監護者と定めることは、親権者が親権を行使するのに著しく欠けるところがあり〜親権を行使させると「子の福祉を不当に阻害することになると認められるような特段の事情」がある場合に限つて許される〜。

2 子の引渡しを命ずるにあたり、環境の変化により〜本人らが受ける影響を考慮し〜あらかじめ数回の面接交渉の機会を与えることを命ずるとともに、〜履行を求めるにあたつては、家裁調査官の関与を求めることが望ましい旨附言〜

(抽出・加工あり。原文参照)
主文

1 抗告人らは、相手方に対し〜本人両名を、おそくとも昭和〜年〜日までに、両者協議によつて決定した、日時場所において引き渡せ。

2 抗告人らは、本決定確定の後右引渡しに至るまで、毎月一度以上両者協議して決定した日(〜協議が調わないときは第二土曜日から翌日曜日)に、〜本人らを、相手方住所に、宿泊させ、相手方と面接交渉させよ。

3 相手方は事件本人らの引渡を受けた後2か月以内に一度両者協議して決定した日時に抗告人ら方に宿泊させ、抗告人らと面接交渉させよ。

理由

 〜要するに相手方には〜父親としての愛情に欠けるものがあり〜本人らは生まれ落ちた時から、抗告人らの手許で何不足なく育つたので、抗告人らに心の底からなじんでおり、この環境を変えて〜引き渡せば〜本人らの精神形成に悪影響を及ぼし〜未成年者らの福祉に害があるというにある。

 しかし〜家裁が親権者の意思に反して子の親でない第三者を監護者と定めることは、親権者が「親権をその本来の趣旨に沿つて行使するのに著しく欠けるところがあり」、「親権者にそのまま親権を行使させると子の福祉を不当に阻害することになる」と認められるような「特段の事情がある場合」に限つて許される

 〜現在〜抗告人らに心の底からなじんでおり〜変更すれば〜福祉に悪い影響を与えるとの点も、確かに〜一時的には多かれ少なかれ子どもに精神的影響を及ぼすであろうが、相手方が親権者として子を養育監護するにつき欠けるところがないかぎり〜一時的現象にとどまる〜子の福祉に回復することのできないような障害を与えるということはできず〜

〜抗告は棄却のほかないが、幼児引渡申立事件については〜環境の変化により事件本人らが受ける影響を考慮してその具体的方法につき特段の配慮を施すことが相当〜
〜引渡しにあたつては、当事者双方は前記趣旨を十分に諒承して〜本人らの真の幸福のため感情的対立を捨て誠意をもつて協議し実行すること、特に抗告人らがそのために協力的態度をとることが望まれる。

 〜月一度以上の相手方宅に宿泊させることを伴なう相手方+その妻〜(父及び養母)との面接交渉を少なくとも4回以上持つた上で完全に引き渡し、
その後〜本人らが相手方宅が真実の住居であることを自ら納得し自らの意思で相手方に帰宅するようにするため、
〜引渡のあつた日から2か月以内に少なくとも一度以上抗告人方に宿泊させ、抗告人らと面接交渉をもたせることが相当〜

 なお〜相手方において家事審判法25条の2、家事審判規則143条の2等〜により家裁調査官の関与を求めることが望ましい〜。