Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

金沢家裁七尾:祖母を監護者とする処分

平成16年(家)第61号 子の監護に関する処分(監護者指定)申立事件
平成17年03月11日 金沢家裁七尾支審
要旨抜き書き

1 父母が〜監護権に関する合意を適切に成立させることができず子の福祉に著しく反する結果をもたらしている場合〜、家裁の権限につき766条を、申立権者の範囲につき834条をそれぞれ類推適用し、〜親族は子の監護に関する処分事件の申立権を有し〜家裁は、家事審判法9条①乙類4号により子の監護者を定めることができる〜、〜祖母からの監護者指定の申立てを認めた事例

2 父母は〜親権者としての責任ある養育態度や監護に対する意欲を見せていない〜、祖母は〜子と同居して〜適切に監護しており、子も祖母に対し自然な愛情を感じているという〜、祖母が〜監護を継続することが子の福祉に合致する〜祖母を子の監護者に指定した事例

 申立人は〜祖母〜、〜未成年者と同居しているところ〜実父母〜らは〜監護に著しく欠けるところがあるから〜審判を求める。

 〜相手方Bは、一時申立人の夫方で養育されていた長男+二女が相手方ら宅に引き取られた後も相手方Bに懐かないこと、相手方Cが家事や家計にだらしがないこと+同人が次々と妊娠し一時は堕胎を承諾したのに結局出産したことなどを不満に思い、平成9年初めころから長男に対し乱暴を加えた。
さらに〜平成10年初めころからは、望まなかった子であり、叱っても泣かずに相手方Bをにらむような仕草をする二女の頭部や顔面を殴ったり、身体を蹴るなどした。

〜相手方Bは〜会社の倒産により〜自宅を明け渡し〜転居〜
〜職を失ったいらだちなども加わり、二女に対する暴行の回数も増え、さらには、二女の食事を1日2食に制限〜風呂の回数を少なくしたり、家族で外出するときには二女を家に残したり、玩具が多くある長女の部屋に二女を1人で入らせないなどした。

 〜相手方Bは、平成〜年12月24日昼、相手方C、長女、長男+本件未成年者とともに出かけた玩具店で〜クリスマスプレゼントを買い〜午後2時ころ〜自宅に帰宅〜、〜午後3時ころ、2階で玩具が床に落ちたような物音がしたことから、二女(当時約1歳11か月)が、1人で入ることを禁止していた長女の部屋に入り込んで遊んでいると思い、2階に上がると、二女が長女の部屋で玩具を散らかし、仰向けの状態で二段ベッドの下段に1人で横たわっているのを見て立腹〜「入ったらあかんやろ。」と怒鳴りつけ、二女の頭部、顔面を手拳で手加減せずに数回殴打した上、その両足首をつかみ、床面から高さ約40センチメートルのベッド上から引きずり降ろし、その身体を床板に叩き付けるなどの暴行〜、二女に頭部顔面打撲傷等の傷害〜。その後、相手方Cが〜寝かせるなどしたが〜午後8時ころ〜容態が悪化〜救急車を呼んで病院に搬送〜、〜午後11時35分ころ〜右頭部顔面打撲傷による急性硬膜下血腫に基づく脳圧迫により死亡〜。
 なお、二女は、生前、相手方Bから継続的に虐待を受けた結果、高度のストレスにより、発育遅延、栄養不良で、胸腺が通常児童の約3分の1までしか発育していない状態に陥っていた。

 相手方Bは、平成〜年〜傷害致死罪〜懲役4年6月〜実刑判決〜相手方Cは〜服役中〜子らとともに生活〜。
 相手方Bは、平成〜年〜出所〜相手方C+子らとともに奈良県○○郡に居住〜。
 ところが、相手方Cは、〜移転後〜本件未成年者の面倒を見きれないとして〜相手方Cの父のところに本件未成年者を連れてきた。〜Eは〜本件未成年者を、当時夫と別居していた申立人とともに居住する〜の自宅に連れて帰り、申立人は、本件未成年者の養育を開始〜。

 申立人が〜同居開始後同人から聞き取ったところ〜ご飯を食べさせてもらえなかった、寝かせてもらえなかった〜保育園に行かせないと言われた〜。

(4) 念書作成に至る経緯

 その後、相手方Cは、家庭内暴力を理由に相手方Bと別れるといい〜申立人のもとを訪れ〜。〜同日付けで、本件未成年者が自分で判断して生活できるまで申立人に預けると述べ、同趣旨の記載がある念書〜指印して申立人に交付〜。

2 判断
(1) 子の監護に関する処分事件〜申立権を子の祖母に認めることができるか〜

ア 〜766条①は〜協議離婚〜する場合の規定〜。しかし〜父母が共に子に対して虐待・放置を行うごとき場合など、父母が子の監護権に関する合意を適切に成立させることができず子の福祉に著しく反する結果をもたらす事態は〜離婚する場合に限定されない〜同条は、父母が子の監護に関する適切な合意を形成できない場合に、家裁が、子の福祉のために適切な監護者等を決定する権限を定める趣旨の条項であると解す〜。

〜834条が存在〜によっても根拠付けられる〜。
〜父母が親権を濫用〜著しく不行跡であるとき〜家裁は、子の親族等一定の範囲の者の請求に基づき父母の親権の全部を喪失させる権限を有するとされている〜。

イ 〜父母が子の監護権に関する合意を適切に成立させることができず子の福祉に著しく反する結果をもたらしている場合には、家裁の権限につき766条を、請求権(申立権)者の範囲につき834条をそれぞれ類推適用〜子の親族は子の監護に関する処分事件の申立権を有し〜家裁は〜子の監護者を定めることができるというべき
ウ なお、上記説示に反するごとき決定例として、仙台高裁平成12年06月22日決定〜が存在〜。しかし、同決定は、子の親族ではない第三者が申立人となった事案に関するもの〜。

(2)〜子の父母ではない者を子の監護者に指定することができるか〜
〜766条①は〜父母のみに制限する明文の規定をおかない〜子の福祉の観点から見て父母以外の者が監護者として最適任という場合もあり得る〜
〜父母が親権を〜本来の趣旨に沿って行使するのに著しく欠けるところがあり、父母にそのまま親権を行使させると子の福祉を不当に阻害することになると認められるような特段の事情がある場合には、父母の意思に反しても〜父母ではない者を〜監護者に指定〜できる〜(東京高裁昭和52年12月09日決〜)。

 〜申立人は、平成〜以降現在に至るまで〜同居して〜適切に監護しており、同人も申立人に対し自然な愛情を感じている〜
〜申立人が〜監護を継続することが〜福祉に合致する。
他方で、同人は、相手方らに対しては好感情を有していない〜。かつ、相手方らの〜親権行使の態様は具体的には明らかではないものの〜二女に虐待を加えて死亡させ〜本件未成年者を同人が自分で判断して生活できるまで申立人に預ける旨述べ、さらには〜家裁調査官らが働きかけたにもかかわらず本件審判手続に積極的に関与しない〜親権者としての責任ある養育態度や監護に対する意欲を見せていない。