東京地裁:遺言と異なる遺産分割協議と遺言執行

平成5年(ワ)第14812号 土地建物持分移転登記更正登記手続請求事件
平成6年11月10日 東京地判
要旨抜き書き

〜受遺者が、遺言の存在とその内容を知りながら〜異なる遺産分割協議を成立させた場合〜遺贈の全部or一部を放棄〜と認めるのが相当〜遺言に優先〜

〜遺言執行者〜職務権限は、遺言の目的とされた土地建物等〜の受遺者らが〜遺贈の〜放棄して遺産分割協議をした場合〜初めから〜効力が生じなかったことになり〜放棄〜部分は当初から相続人に帰属〜になる〜執行者は〜権限がなくなり〜、〜遺産分割協議は〜「相続財産の処分」or「遺言の執行を妨げるべき行為」にあたらない。

(抽出・加工あり。原文参照)

〜亡Aは〜公正証書〜土地建物の持分10分の5を被告らにそれぞれ2分の1の割合で遺贈し、〜を〜に遺贈する旨の遺言〜執行者として弁護士を指定〜
〜「できることなら〜遺言どおりの内容の遺産分割協議を〜成立させて欲しい。〜だめなら本件遺言によって処理して欲しい。」旨を頼まれていた。

〜結局〜(1)〜土地建物に対する亡Aの持分10分の5の5分の1〜を原告が取得〜残る10分の4を2分の1ずつ被告らが取得すること+これにより〜原告の持分が合計10分の2となるので、被告らは〜地下1階ないし2階部分の賃料合計約32万円の内の10万円を原告に交付すること、(2)〜〜合意

〜原告は〜合意に反して〜16万円を〜要求〜被告らは〜反発〜。〜遺言に従って処理することに翻意〜
9 弁護士は〜遺言に基づき〜被告らに対するA持分全部移転登記を経由〜

二 判断

1(一)特定の土地建物を相続人の一部の者に遺贈する旨の遺言がある場合において〜遺贈を受けた相続人が右遺言の内容を知りながらこれと異なる遺産分割協議をした場合〜遺産分割協議は右遺言に優先〜。
〜けだし、特定物の受遺者はいつでも遺贈〜を放棄〜できる〜(986条①)、自己に有利な遺言の内容を知りながら〜異なる遺産分割協議を成立させた場合には特段の事情のない限り遺贈の〜放棄〜と認めるのが相当〜。

(三)〜被告らは〜遺贈を〜放棄したものというべき〜、もはや〜遺言があることを理由に〜遺産分割協議に基づく登記手続を拒むことはできない〜

〜「〜遺産分割協議は〜成立の前提条件として〜賃料が月10万円となっていた〜、原告は〜自らこれを破り、16万円を要求してきた〜から、〜前提を失い、効力を有しなくなった〜。」旨主張〜
〜右10万円の支払いが〜前提条件となっていたとまでは未だ認められず、また〜月16万円の要求に対しては〜別途解決すればよい〜それをもって一旦成立した本件遺産分割協議を無効となし得るものでもない。

2 被告らは、〜本件遺産分割協議が〜1013条〜「相続財産の処分」にあたる旨主張〜、
 本件遺言によって遺言執行者〜が取得した職務権限〜は、〜目的とされた本件土地建物と〜に関するもの〜(1014条)〜遺贈が放棄された場合には初めから〜効力が生じなかったことになる〜(986条②)〜放棄〜部分は当初から相続人に帰属〜(995条)、〜遺言執行者において〜執行〜権限〜なくなる〜、〜「相続財産の処分」or「遺言の執行を妨げるべき行為」にはあたらない

 「地裁判決」です。また、一般的に遺言と異なる協議が問題になるのは「遺贈」ではなく、「相続させる遺言」ですので、本判決が当てはまる事例は、現在ではあまりないのではないかと思われます。