Genmai雑記帳

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「最高裁・預金の遺産分割判決」:岡部喜代子の補足意見

★最高裁(新):預貯金債権は遺産分割の対象となる。(判例変更) - g-note(Genmai雑記帳)についての、裁判官岡部喜代子の補足意見。(抽出・加工あり。原文参照)

 共同相続が発生〜898条899条により相続分に応じた共有となる。〜金銭〜給付を目的とする債権であっても同様〜。

当該債権〜は〜264条の規律するところ〜が,〜特則としての〜427条により相続人ごとに分割され〜相続人の数だけ債権が存在することとなると考えられているところ〜。

しかし〜上記のとおりまず準共有状態が発生〜,分割〜阻害〜要因があれば,分割されずに準共有状態のまま存続すると解することが可能〜。
普通預金契約(通常貯金契約を含〜)の本体は消費寄託契約〜が〜付随して口座振替等の準委任契約〜も多い〜,普通預金決済手段としての性格を強めていることは多数意見の〜とおり〜
普通預金債権を共同相続した場合〜同時に準委任契約上の権利義務も〜承継〜。
例えば口座振替契約の解約〜,それは性質上不可分な形成権の行使〜,かつ,処分行為〜〜251条により相続人全員で行わなければならない。

 ところが預貯金債権が当然〜分割〜各人の権利行使が認められることになると,共同相続人の一人が自己の持分に相当する預貯金を全額払い戻して預貯金債権を行使する必要がなくなる結果,預貯金契約自体あるいは口座振替契約等についての処理に支障が生ずる可能性がある。
〜また,各別の預貯金債権の行使によって,1個の預貯金契約〜一つの口座中に〜相続人ごとに残高の異なる複数の預貯金債権が存在〜という事態が生じざるを得ない。
〜このような事態は,振込等があって残高が変動しつつも同一性を保持しながら1個の債権として存続するという普通預金債権の性質に反する〜,
また〜当事者の意思としても認めないところであろう。

〜共同相続の場合には,普通預金債権について相続人各別の行使は許されず,準共有状態が存続するものと解することが可能〜。
以上のとおりであるから,多数意見の結論は,預貯金債権について共同相続が発生した場合に限って認められるものであろう。

ところで,私は〜903条+904条の2の文理並びに共同相続人間の実質的公平を実現するという趣旨に鑑み〜可分債権は共同相続により当然に分割されるものの,上記各条に定める「被相続人が相続開始の時において有した財産」には含まれると解すべきであり,分割された可分債権の額をも含めた遺産総額を基に具体的相続分を算定し,当然分割による取得額を差し引いて各相続人の最終の取得額を算出すべきであると考えている。

〜従前は預貯金債権も当然に分割される可分債権に含まれると考えてきた。
〜しかし,最高裁〜が権利の性質を詳細に検討して少しずつ遺産分割の対象財産に含まれる権利を広げてきたという経緯,
預貯金債権も遺産分割の対象とすることが望ましいとの結論の妥当性,
そして上記のとおり理論的にも可能であるという諸点から多数意見に賛同したいと思う。

ただ,当然に分割されると考えられる可分債権はなお各種存在し,預貯金債権が姿を変える場合もあり得るところ,それらについては上記のとおり具体的相続分の算定の基礎に加えるなどするのが相当であると考える。