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最高裁(新):保証契約の代わりに締結した貸金請求権による時効中断

平成28(受)944 貸金請求事件
平成29年03月13日 最二小判
裁判要旨抜き書き

 貸金の支払を求める〜支払督促が〜当該〜当事者間〜保証債務〜について消滅時効の中断の効力〜ない〜事例

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

(1)被上告人は,平成4年〜Aに対し,7億円を貸し付けた。
(2)被上告人と上告人と〜平成6〜債務弁済契約公正証書〜が作成〜。
 〜上告人が同年7月〜被上告人から借り受けた1億1000万円を,同年9月20日を初回,平成7年10月〜を最終回として,1000万円ずつ11回〜分割弁済する〜,〜遅滞した場合〜期限の利益を喪失することなどが記載〜
もっとも,本件公正証書は〜作成当時にAが〜遅滞していたことから,上告人が被上告人に〜Aの〜債務について1億1000万円の限度で連帯保証する趣旨で作成されたものであった〜

(3)被上告人は,平成16年〜までに,上告人に対し〜上告人に〜貸し付けた貸金1億1000万円のうち1億0950万円の支払を求める〜支払督促の申立てをし〜送達された。被上告人は〜仮執行の宣言の申立てをし〜確定〜。

原審

 〜支払督促は〜公正証書の記載と同一内容の貸金債権を請求債権としたものであるところ〜
公正証書は〜Aの債務の一部につき連帯保証する趣旨で作成されたもの〜,〜支払督促は,要するに〜公正証書に基づく被上告人の〜債権を行使するものであるから,〜貸金債権の権利主張は〜保証債務履行請求権の権利主張の一手段,一態様とみることができる。〜
〜支払督促は〜保証債務の履行を求める旨の支払督促に準ずるものとして〜保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずる。

最高裁

公正証書には,上告人が被上告人から1億1000万円を借り受けた旨が記載されているものの〜借受けを証するために作成されたのではなく〜保証契約の締結の趣旨で作成されたという〜
〜しかるに,被上告人は〜支払督促の申立てにおいて〜公正証書に記載されたとおり〜貸金の返還を求めたもの〜。〜
貸金返還請求権の根拠となる事実は〜保証契約に基づく保証債務履行請求権の根拠となる事実と重なるものですらなく,むしろ,〜保証契約の成立を否定するものにほかならず〜貸金返還請求権の行使は〜保証契約に基づく保証債務履行請求権を行使〜とは相容れないもの〜。

〜支払督促において貸金債権が行使されたことにより,これとは別個の権利である〜保証契約に基づく保証債務履行請求権についても行使されたことになると評価することはできない。
したがって〜支払督促は〜保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。

 法律に明るくない素人の人が「債務」と言う1点をとらえて「貸金」として書面を交わしているようなケースはまま見受けられます。

 しかし、億単位の貸付や保証契約を行いながら上記のような処理になっていることは考え難く、特に金融機関がこのような処理を行うことはあり得ないようにも思います。(何かほかの特別な事情でもあったのでしょうか?)

 それとも公正証書契約の締結時点での真意は、既にAからの返済が見込めないと考えて、保証債務履行による支払を準消費貸借契約として弁済する意味での締結だったのでしょうか?

いずれにしても、最高裁の判断は、請求の基礎にすら同一がない債務名義など・・・、と言う所でしょうか?
 原審が見られませんのでわかりませんが、実際の事情に興味が湧きます。

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